真壁レオ22 2人の朝2
スマホを掴み、震える指で発信しようとした、その時。
ふわり。
部屋の外から、いい匂いがした。
そして。
「レオ? 起きた?」
聞こえてきた声に。
レオはその場で固まった。
数秒後。
全身の力が抜けて。
「……いた」
心底安心した顔で、そのまま床へ崩れ落ちた。
「……レオ?」
部屋のドアから、ひょこっと唯衣が顔を出した。
髪を後ろでゆるく結んでいる。
朝の光。
柔らかい表情。
かわいい。
その瞬間。
さっきまでの絶望が、全部吹き飛んだ。
世界、終わってなかった。
「レオ? 大丈夫?」
唯衣は慌てて近づいてくる。
「ベッドから落ちた?」
心配そうな顔。
レオは数秒固まったあと、なんとか口を開いた。
「……だ、大丈夫。ありがとう」
本当は全然大丈夫じゃなかった。
精神が死にかけてた。
でも今、生き返った。
「朝ごはん作ったよ」
唯衣がふわっと笑う。
「台所、勝手に借りてごめんね」
「……冷蔵庫、何も無かっただろ」
「うん」
悪びれず頷く。
「早く目が覚めたから、散歩ついでに買い物行ってきたの」
その言葉に、レオの耳がぴくりと動いた。
散歩。
この街を。
オレの家の周りを。
唯衣が歩いた。
なんかもう、それだけで嬉しい。
「危険な事なかったか?!」
「つきまといとか、変なヤツに遭遇したりとか?!」
唯衣はびっくりした目をして、そして、またすぐ優しく微笑んで、
「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ。レオの住んでるとこ、すごくいいところだね」
唯衣は窓の外を見ながら笑った。
「静かだし、公園もあるし、スーパー近いし」
生活の話。
未来みたいな話。
レオの脳内で。
「嫁に来て」
が無限ループしていた。
今すぐ言いたい。
でも重い。
絶対重い。
付き合ってまだ数日だ。
落ち着け。
落ち着けオレ。
だが。
味噌汁の香りと。
朝の光と。
好きな女がいるこの空間が。
あまりにも幸せすぎて。
レオは本気で、 このまま時間が止まればいいと思った。




