真壁レオ19 初デート5
ブラックコーヒーしか出せない自分にがっかりした。
ひとまず、せっかく淹れたから出す。
「いい匂いだね。ブラックあまり飲まないけど、うん。美味しい。ありがとう、レオ」
「カフェラテ作れるようキッド買っとく。」
「いいよ、大丈夫!わたしもブラック飲めたらいいなって思ってるし。」
耳と尻尾がしゅんとなる。
「あっ、唯衣にプレゼントある。」
そっと箱をだす。
「開けていい?」
「もちろん」
「かわいい!月のネックレスだ!」
唯衣は、
嬉しそうにネックレスを見つめていた。
小さな三日月。
繊細なチェーン。
派手じゃない。
でも。
ずっと身につけたくなるような、 優しいデザイン。
「……ほんとにかわいい」
その声だけで、 レオの胸が熱くなる。
よかった。
ちゃんと喜んでる。
それだけで、 今日全部成功した気がした。
唯衣は、 そっと箱からネックレスを持ち上げる。
「つけてみてもいい?」
「……うん」
レオの喉が、 少しだけ渇く。
唯衣は、 髪を耳へかけながら、 ネックレスをつけようとした。
だが。
慣れていないのか、 金具がうまく留まらない。
「あれ……?」
「……貸して」
自然に声が出た。
唯衣が、 少しだけ驚いてレオを見る。
でも、すぐ笑って背中を向けた。
「お願い」
白い首筋。
細い肩。
柔らかそうな髪。
近い。
近すぎる。
レオは、 息を止めながら、 そっとチェーンを持つ。
指先が、 肌へかすかに触れた。
熱い。
甘い匂いする。
無理。
狼、 死ぬ。
脳内獣、思考停止。意識不明。
それでも。
震えないよう、 必死に金具を留める。
「……できた」
「ほんと?」
唯衣が、 振り返る。
胸元で、 小さな月が揺れていた。
似合う。
びっくりするぐらい。
レオは、 しばらく言葉を失う。
唯衣が、 少し照れながら笑った。
「どう?」
「……かわいい」
即答。
しかも、 めちゃくちゃ真顔。
唯衣の頬が、 ふわっと赤くなる。
レオは、 逃げるみたいに、 グラスのウィスキーを飲んだ。
濃い。
でも。
全然足りない。
目の前の唯衣の方が、 ずっと危険だった。
「レオ、 ありがとう」
唯衣が、 そっとネックレスへ触れる。
「大事にするね」
その一言で。
レオの耳としっぽ、 完全復活した。




