真壁レオ17 初デート3
「レオ、ありがとう」
夕焼けを見つめたまま、唯衣が小さく呟く。
「今日のこと、この景色……きっと忘れない」
風が髪を揺らす。
「大切な思い出にするね」
レオは静かに目を細めた。
「……オレも同じだよ」
胸の奥が、じんわり温かい。
こんな感情、知らなかった。
日が沈み、二人は車へ戻る。
軽く夕食を食べて。
唯衣を家まで送って。
最後にプレゼントを渡す。
今日のデートプランは完璧だ。
レオは内心、静かに達成感を覚えていた。
そして。
唯衣の家の近くまで車を走らせる。
夜の街灯が窓へ流れていく。
その時だった。
「……唯衣?」
静かな車内。
唯衣が少し俯いている。
「どうした? 疲れたか?」
「……ねぇ、レオ」
「ん?」
唯衣がゆっくりこちらを見る。
「もう、お別れ?」
「……え?」
心臓が止まりそうになる。
別れたくないに決まってる。
むしろ今すぐ抱えて帰りたい。
でも。
疲れさせたくない。
困らせたくない。
そう思って我慢していた。
「レオ、まだ一緒にいたいの」
その瞬間。
レオの理性が静かに崩れた。
「……いいよ」
声が少し掠れる。
「嬉しい」
唯衣が笑う。
かわいい。
本当に無理。
「……オレの家、来る?」
「いいの?」
「当たり前」
即答だった。
レオの家は、高層マンションの上階だった。
広い。
静か。
モノトーンで整えられた空間。
無駄がない。
でもどこか温度が低い部屋。
「わぁ……」
唯衣がゆっくり室内を見回す。
「レオって感じだね」
「そう?」
「うん。すごく整ってる」
唯衣は嬉しそうに笑った。
「わたしの好きな感じに似てる」
レオが固まる。
空間演出。
導線。
配置。
空気。
全部、レオ自身が設計したもの。
つまり唯衣は今。
“レオらしさ”を好きだと言った。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。
好きな女に。
自分の世界を好きだと言われる幸福を。
レオは初めて知った。




