第五統合生活支援事業部
52階のワンフロアすべてが、第五統合生活支援事業部だった。
広い。
いや、広すぎる。
天井近くを小型搬送ドローンが飛び、
無数のモニターに案件情報が流れている。
獣人族、人族、有羽族、魔族。
種族も年齢もバラバラな社員たちが、それぞれ忙しそうに働いていた。
部署の中はさらに細かく課が分かれているようだった。
都市福祉課。
医療支援課。
居住環境整備課。
種族調整課。
そして──
空間演出課。
受付でIDカードを提示すると、女性スタッフが軽く目を見開いた。
「本日配属の白石さんですね。少々お待ちください」
耳元のインカムで誰かと連絡を取っている。
数十秒後。
奥の通路から、一人の男がこちらへ歩いてきた。
三十代くらいだろうか。
黒髪。
細身のスーツ。
疲れているようにも見えるのに、不思議と目だけは鋭い。
「どうも」
軽く手を挙げる。
「僕が空間演出課のリーダー、
朝倉 環です」
柔らかな口調だった。
けれど。
周囲の社員たちが、彼を見ると少しだけ空気を変えたのを、唯衣は見逃さなかった。
「本日よりよろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をして、彼についていく。
「おーい、橘さん。ちょっとこっち来てー」
奥のデスクから、「はーい」と気の抜けた返事が聞こえた。
少しして現れたのは、長い髪をひとつにまとめた女性だった。
年齢は二十代後半くらい。
ラフに腕まくりしたシャツ。
資料の束を抱えたままこちらへ歩いてくる。
「新しい子?」
「そう。今日から配属の白石さん」
彼女はぱっと表情を明るくした。
「え、かわいい。新人ちゃんじゃん」
距離が近い。
でも嫌な感じはしなかった。
「私は橘 千景。空間演出課のサブリーダー兼、君の教育係ね」
差し出された手は温かかった。
「大丈夫大丈夫。最初はみんな死にそうな顔してるから」
朝倉さんが苦笑する。
「縁起でもないこと言わないで」
「でも本当じゃないですか」
橘さんはケラケラ笑ったあと、唯衣の肩を軽く叩いた。
「安心して。倒れる前にちゃんと拾うから」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。




