人族の新人
雨上がりの高層街区。
ガラスの外壁に、六本の月がぼやけて映る。
地上三百メートル。
《NEXUS PROJECTS 本社タワー》。
都市そのものを設計する会社。
ビルを建てるだけじゃない。
「人が、どう生きるか」を商品にしている。
有羽族向けの立体交通網。
獣人族でも暮らしやすい温度調整住宅。
魔族用の魔力制御医療。
老朽化した旧地下街の再開発。
全部、この会社の仕事だ。
その巨大企業のエントランスに、今日も新人が一人。
白石唯衣、22歳。
黒髪。
少し大きめのIDカード。
新品のタブレット。
まだ“社会人の顔”が完成していない。
「……大きい」
見上げた本社ビルは、空を食っていた。
周囲を歩く社員たちも種族は様々だ。
狼系獣人の警備員。
白い翼をたたんだ有羽族の秘書。
角を隠すように帽子を深く被った魔族研究員。
その誰もが忙しそうで、
その誰もが“ここに居る理由”を持っている。
唯衣だけが、まだ少し浮いていた。
今日から正式配属。
配属先は──
《第五統合生活支援事業部》。
通称、
「ごった煮部署」。
都市福祉、医療補助、居住支援、種族間トラブル調整。
利益率は低い。面倒は多い。
でも会社が絶対に切れない部署。
そこで唯衣は、“アシスタント”として働く。
ただし、
NEXUS PROJECTSのアシスタントは、
お茶汲みをする仕事じゃない。
会議資料を作り、
現場に同行し、
契約交渉を補助し、
時には住民説明会で怒鳴られる。
新人でも容赦なく実戦投入。
その代わり、生き残れば強い。
受付はAIだ。
少し大きめのID カードをスキャンする。
わたしの初出勤が確定されたようだ。
モニターには52階 第五統合生活支援事業部
と出ていた。
本編の裏側や、レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。
小説の合間の息抜きにどうぞ。
X「真壁レオは今日も重い」
@reo_yui_archive




