唯衣倒れる1
レオが帰ってきて、一ヶ月が経った。
レオの生活は相変わらず忙しい。
北米との十三時間の時差のせいで、
わたしが出社している間に眠り、
真夜中になると仕事をしている。
それでも。
わたしが眠りにつくまでは
必ず側にいてくれる。
そして、
わたしが寝たあとに仕事を始めるらしい。
無理してないかなと思うけれど、
本人は平然としている。
一方、わたしはというと……
心はとても元気だ。
レオが帰ってきてから、
毎日が幸せで満たされている。
だけど
身体の調子はあまり良くない。
絶対レオのせいだ。
全然手加減してくれないし。
ニューヨークから買ってきたものを見せては、
「似合うと思った」
なんて言うし。
本当に困る。
困るのだけれど。
こうして愚痴をこぼせるのも、
きっと幸せの証なんだと思う。
レオがいて
笑って
一緒に眠って
また明日を迎える。
そんな当たり前が、
今はとても愛おしかった。
今日は特に食欲がなかった。
料理長特製のスムージーだけを、
なんとか口にする。
ちょっとフラフラするかな
そう思った。
「唯衣、会社行けそうか?」
レオが心配そうに顔を覗き込む。
リモートの仕事を中断して、
毎朝会社まで送ってくれる。
「微熱だから大丈夫だよ」
「行くよ」
「今日、夏のコンペの打ち合わせあるから」
そう答えたものの。
正直。
少しまずい気もしていた。
それでも支度を整え、
レオと一緒にエントランスへ向かう。
その時だった。
視界がぐらりと揺れる。
あれ?
そう思った瞬間。
力が抜けた。
「唯衣!」
遠くでレオの声がする。
「唯衣様!」
「景様!唯衣様が!」
騒がしい。
でも
身体が重い。
「泰山のじじぃが帰ってきているか調べろ!」
「唯衣!」
「目を開けてくれ!」
レオの声だけは分かった。
温かい。
抱き上げられているのも分かる。
大丈夫。
そう言いたいのに。
声が出ない。
レオの温もりを感じながら。
私の意識はゆっくり途切れた。
最終章突入です。
あともう少しお付き合い下さいませ!




