再会 四ヶ月を埋める2
「風呂はあとな」
レオが覆いかぶさるようにして、
わたしを優しく抱きしめる。
その肌に触れるたび、
わたしの身体のあちこちに、
彼が刻んだ「所有の証」を
付けてくれているのがわかる。
それが
嬉しくて、
誇らしくて、
また視界が涙で滲んでいく。
「ははっ」
「……唯衣、お前」
「やっぱり、目の色が変わってる」
レオが満足げに、甘い声で笑う。
向こうの世界へ
連れ去られていたわたしには、
今の自分の瞳が
どんな色をしているのかさえ分からない。
けれど、
レオがそれほどまでに
嬉しそうにしているなら、
それでいいと思った。
……目が覚めると、
身体はすっかり綺麗に洗われていて、
新しい夜着も丁寧に着せられていた。
レオがしてくれたんだ。
紅葉さんや小雪さんが入ってきた形跡が
どこにもない。
隣では、レオがまだスヤスヤと眠っている。
彼の耳は少し垂れ下がり、
腕と足、そしてしっぽまでもが、
わたしの身体を隙間なく、
大切そうに包み込んでいた。
まるで、どこへも行かせないように。
全身で
「俺のものだ」
と主張するように。
彼にすべてを委ねて、
その体温に守られていることが嬉しくて。
唯衣はまた、そっと涙をこぼした。
「唯衣……?」
低く掠れた声で、
レオがゆっくりと目を開ける。
わたしは彼が目覚めた嬉しさに、
そっと触れるだけのキスを送った。
「レオ、寂しかった……」
そう伝えて、
また彼の胸にぎゅっと顔を埋める。
するとレオはわたしの髪を優しく梳きながら、少し不機嫌そうに、
けれど愛おしそうに呟いた。
「お前はわかってない」
「俺のほうが、ずっとヤバかった」
そう言って、
レオからも触れるだけの甘いキスが返ってくる。
「わたし、四ヶ月間、頑張ったんだよ」
そう言いながら、
今度は少し深いキスをねだるように
唇を寄せた。
レオは愛おしげに目を細め、
「知ってる」
と小さく答える。
「だから俺も、お前を想ってやれたんだ」
返ってきたのは、
さっきよりもずっと熱を帯びた、
深いキス。
四ヶ月の蓄積が、
触れ合うたびに溶けていくようだ。
しばらくそうして甘い時間を
共有していたけれど
レオがふと、
「腹、減ってるだろ?」
とおでこに優しくキスをして、
身体を離した。
彼は机に並べられた軽食を確認すると、
用意されていた水を取りコップに入れた。
ベッドサイドで
ひと口だけ口に含んで
迷わずわたしの唇へと寄せてくる。
喉が枯れていたわたしにとって、
レオの口から与えられる水は、
どんな高価なワインよりも甘く、
身体の隅々にまで潤いが
染み渡っていくようだった。
「もっといるか?」
と問われ、
わたしが小さく頷くと、
レオは満足するまで
何度も口移しで与えてくれた。
「今、何時?」
眠気でとろんとした目で尋ねると、
レオは時計をちらりと見て
「明け方前かな」
と答えた。
彼はわたしの身体を労るように
抱きかかえると、
機嫌よく
2本のしっぽをふりふりと揺らしながら、
ゆっくりと浴室へ向かってくれた。
広い浴室で、
レオはまるで宝物を扱うように、
指先ひとつひとつまで丁寧に洗ってくれる。
その指使いからも、
彼がどれほどわたしを慈しんでいるかが
伝わってきて、
心まで温かくなった。
それから、
用意されていた軽食をふたりで分かち合う。
何を食べたかも覚えていないけれど、
レオと一緒に食べるというだけで、
こんなにも美味しく感じるなんて。
再びベッドに戻り、
レオの胸元に顔を寄せる。
眠りに落ちる直前、
彼はわたしの耳元で囁いた。
「もう、ずっと一緒にいられる」
「リモートで仕事ができるよう、
すべて整えてきた」
その言葉を聞いた瞬間、
四ヶ月間張り詰めていた心が、
糸が切れたようにふわりと解けていく。
ああ、もう離れなくていいんだ。
レオがそばにいてくれる。
その安心感に包まれて、
深い、深い安らぎの中へ溶けていった。




