唯衣の元へ向かう1
今、
俺は日本行きの飛行機の中だ。
腹立たしいことに、
予定より三日も遅れた。
システムは完璧。
メンバーの体制も問題ない。
実験運用も順調だった。
なのに
ハリケーンが来た。
正確には
日本へ向かう飛行ルート上に
発生した大型ハリケーンだ。
安全が確認できるまで飛行機は飛ばない。
三日。
三日もだ。
ありえないだろ。
どうして今なんだ。
来るなら俺が帰ってから来い。
マジで。
この三日間
イライラしていた。
だから仕事をした。
もっと改善できる場所はないか。
もっと効率化できないか。
もっと良いシステムにできないか。
怒りを全部仕事にぶつけた。
その結果。
北米メンバーは少し引いていた。
「CEO」
「ひとまず空港へ行かれては?」
遠回しな追い出しだった。
だが俺は首を振る。
「どうせ飛ばないんだろ」
「だったら仕事する」
「その方が唯衣の側に長くいられる」
そう言うと。
全員が黙った。
数秒後。
誰かが呟く。
「可哀想……」
ひどい。
俺だって一秒でも早く帰りたいんだ。
そんな時だった。
景から連絡が入る。
『若』
『真壁コーポレーション名義で航空機を手配しました』
『飛行可能です』
一瞬。
意味が分からなかった。
そして。
理解した。
飛べる。
帰れる。
唯衣の所へ。
「行ってくる」
レオは即座に立ち上がった。
慌てて荷物をまとめる。
そんな俺を見て。
北米メンバー全員が立ち上がった。
拍手。
スタンディングオベーション。
なぜかスタンディングウェーブまで始まる。
「Congratulations!」
「Good luck!」
「Finally!」
好き放題言いやがる。
レオは小さく笑った。
「あとは頼む」
それだけ言い残し。
誰よりも早くオフィスを飛び出した。
唯衣が待っている。
その事実だけで。
足取りは驚くほど軽かった。




