週末の二人 真壁唯衣1
今日は一日、
レオも休みだ。
昼からテレビ電話をする約束になっている。
それが嬉しくて仕方なかった。
「唯衣様、すごくご機嫌ですね!」
小雪が嬉しそうに笑う。
「うん!」
「一週間の楽しみ!」
隠しきれない笑顔で答えた。
「唯衣様の笑顔は天使です!」
「小雪!」
「わたしが今言おうと思ってたのに!」
紅葉が負けじと声を上げる。
「唯衣様、紅葉は女神様だと思いました」
「ふふふ」
「二人ともありがとう!」
楽しそうに笑った。
久しぶりのレオだ。
顔を見ながら話せる。
それだけなのに胸が弾む。
離れて初めて気付いた。
当たり前だった毎日が、
どれほど幸せだったのか。
レオが隣にいることが、
どれほど大きなことだったのか。
十三時間の時差。
毎週、
レオは夜中の時間を使って
唯衣に合わせてくれている。
その優しさが嬉しかった。
朝から三人で大騒ぎだ。
「この服どうかな?」
「素敵です!」
「でもこっちも似合うと思います!」
服を選び。
髪を整え。
鏡の前で何度も確認する。
まるで初めてのデートを待つみたいに。
約束の時間まで、
わたしはは二人のメイドと賑やかに過ごした。
約束の時間が近付くと、
小雪と紅葉はそっと席を外した。
毎週のお約束だ。
二人だけの時間を邪魔しないように。
やがてスマートフォンが震える。
慌てて通話ボタンを押した。
画面いっぱいに映る白銀の髪。
「唯衣、会いたい」
開口一番だった。
思わず笑う。
「レオ」
「うん、会いたいよ」
毎日電話はしている。
それなのに。
顔を見ながら話すのは、
なんだか少し照れくさい。
「顔色は良さそうだな」
レオが安心したように言う。
「レオはちょっと疲れてる?」
「まぁな」
レオは肩を竦めた。
「昨日から景がいてるから」
「何かと煩くてウザい」
その様子が簡単に想像できて、
吹き出した。
レオもつられて笑う。
「あのね」
少し身を乗り出した。
「今日は一緒に、あの時の夕焼けを見たいの」
「あの時?」
「デートで見たやつ」
「ああ」
レオの表情が柔らかくなる。
「いいよ」
「夕方前には車を用意させる」
「大丈夫!」
慌てて首を振った。
「ベルを鳴らしたらすぐ来てくれるよ」
「ダメだ」
即答だった。
「今は俺との時間だ」
レオが少し不機嫌そうに言う。
「一週間」
「すっげー我慢して仕事してたんだ」
「一秒も誰にもやらない」
その言葉に、
思わず笑ってしまった。
離れている。
触れることもできない。
すぐ隣に温もりもない。
それでも
心はちゃんと繋がっている気がした。
「わたしね」
「ん?」
「レオメーターがゼロだったから」
「補充できて嬉しい」
レオが一瞬きょとんとする。
そして小さく笑った。
「あったな」
「プロジェクトの時」
レオが笑う。
忙しくて会えなかったあの頃。
二人でそんな話をしたことがあった。
「俺は点滅中だ」
「まだ足りない」
「ふふっ」
「欲張り」
「当たり前だ」
また二人で笑った。
こんな何気ない時間が嬉しい。
顔を見て話すこと。
同じ景色を見ようと約束すること。
他愛もない話で笑い合うこと。
当たり前だった日々。
けれど離れてみて初めて気付いた。
レオが隣にいることは、
当たり前じゃなかったのだと。
自分が思っていた以上に、
大切な存在だったのだと。
画面の向こうのレオを見つめる。
ただ顔を見ているだけなのに。
胸の奥がじんわりと温かくなった。




