新入生歓迎会4 二日目
「陽向!」
「湖に散歩行こうぜ!」
「すっげー綺麗らしいぞ!」
翌朝。
まだ夢の中だった俺は、
突然聞こえた大声に目を開けた。
「……ん」
目の前には同期の陸。
しかも勝手に部屋へ入ってきている。
「起きろー!」
「朝だぞー!」
「なんで入ってきてるんだよ……」
布団を頭まで引き上げる。
すると
「お前、まだ眠いの?」
陸が呆れたように笑った。
「昨日なかなか寝れなかったから……」
正直に答える。
「あははは!」
途端に部屋が笑いに包まれた。
「お前、昨日後半変なテンションだったもんな!」
「落ち込んでると思ったら急に元気になるし!」
「何だったんだよあれ!」
「知らねぇよ……」
俺は枕を抱えたまま答える。
本当に分からない。
昨日。
真壁先輩と電話して。
声を聞いて。
少し話して。
それだけなのに。
なんだか嬉しくて。
なかなか寝付けなかった。
「ほら!」
「行くぞ!」
「せっかく来たんだから楽しもうぜ!」
「無理……」
抵抗する間もなく。
布団を剥ぎ取られた。
「返せ!」
「却下!」
「着替えろ!」
結局。
俺は陸に引きずられるようにして、
湖へ向かうことになった。
ロビーへ降りると、
すでに数人の同期たちが集まっていた。
「陽向も行くの?」
声を掛けてきたのは、
同じ柴犬族の同期、柴崎ひかりだ。
「本当はまだ寝たい……」
陽向は大きな欠伸をしながら答えた。
「昨日、遅かったの?」
「うん」
「ちょっと考え事してた」
そう答えると、
「だったら電話くれたらよかったのに」
「私、いくらでも付き合ったのに」
電話。
その言葉を聞いた瞬間、
昨日の真壁先輩との会話が頭をよぎる。
『そう言ってもらえると嬉しいな』
優しい声。
思い出しただけで、
なぜか少し顔が熱くなった。
「陽向?」
「聞いてる?」
「え?」
慌てて現実に引き戻される。
ひかりは不満そうに頬を膨らませていた。
「ねぇ」
「陽向、手繋ご?」
そう言いながら、
ひかりは勝手に腕を絡めてくる。
「えっ?」
「何で?」
「嫌だよ」
陽向は即答し腕を払い除ける。
「えー!」
「いいじゃん!」
「嫌だ」
「ケチ」
「意味分かんないし」
いつものようなやり取りに、
周囲の同期たちが笑い出す。
「あいつらほんと仲いいよな」
「それ思った!」
「入社式の頃からずっとあんな感じだよね」
「付き合ってるわけじゃないの?」
「違うんじゃない?!」
「まだ、じゃない?!」
勝手なことを言われている。
「ほら!」
「そろそろ行こうぜ!」
誰かの声を合図に、
同期たちはぞろぞろと歩き出した。
朝の空気はひんやりしていて気持ちいい。
湖まで続く遊歩道には、
若葉の香りが漂っていた。
陽向もその後を追いかける。
けれど頭の片隅には、
まだ昨日の電話が残っていた。
ブックマーク、評価、して頂けると嬉しいです。
いつもお読み頂きありがとうございます。




