真壁レオ12
「白石さん?」
「はい」
「白石唯衣さん」
「はい」
「……唯衣さん」
「はい!」
「唯衣」
「はい!」
ぱっと顔を明るくする。
「唯衣って呼んでくれるんですか?」
その笑顔。
駄目だ。
耳。
尻尾。
髪。
全部が嬉しいって叫んでる。
今のオレ、多分すごくうるさい。
唯衣は少し照れたように笑って、でも真っ直ぐこちらを見た。
「真壁統括」
「……っ」
「わたしと、お付き合いしてくれませんか?」
レオの呼吸が止まる。
「わたしと一緒にいてほしいです」
泣いていいか?
いやもう脳内は泣いてる。
脳内の獣が感極まって床に突っ伏してる。
「……あの」
レオは片手で顔を覆った。
駄目だ。
心臓が限界。
「唯衣さん、破壊力すごいの自覚してほしいデス」
敬語とカタコトが混ざる。
「オレ、心臓もたないんで……」
唯衣がくすっと笑う。
かわいい。
さらにダメージ。
「……あの、オレと付き合ってくれたら、絶対幸せにします」
必死だった。
人生でこんなに必死に言葉を探したことがない。
「オレ、結構お金あります」
何言ってるんだ。
「使ってないので……」
違うそうじゃない。
「送り迎えとか苦痛じゃないです。あ、唯衣さん限定です」
限定ってなんだ。
「あと、その……やりたいこととか、したいこととか……全部、全力で……プランニング……させてもらいます? す?」
最後ぐちゃぐちゃだった。
唯衣は少し目を丸くしたあと、ふわっと笑った。
「ふふふ。はい!」
その笑顔だけで、レオはもう駄目だった。
「でも、今のままで充分です」
「……え」
「わたしのこと、ちゃんと見ててくれてありがとうございます」
静かな声。
優しい声。
そして。
「……レオ」
名前を呼ばれた瞬間。
レオの理性は、綺麗に蒸発した。
今この瞬間。
世界で一番幸せな獣人は、自分だと思った。




