新入社員1
レオが海外へ赴任し、
第五統合事業部は
外部から新しい統括を迎え、
新体制でのスタートを切った。
今回の人事では、
朝倉環リーダーが
その能力を最大限に活かすべく
医療技術課へ異動となり、
空間演出課は
橘千景さんが新しいリーダーとして
率いることになった。
私自身も、
現在は秘書課コースとビジネス英語コース、
二つの研修と業務を両立しながら
慌ただしい毎日を過ごしている。
大変だけれど、
レオがいない一年を
ただ待つだけの時間にはしたくない。
少しでも成長して、
一年後に胸を張って
レオの隣に立てるように――。
そんな思いで机に向かう日々だ。
そんな変化の多い中、
第五統合事業部に新入社員たちが配属された。
空間演出課にも数名の新人が加わる。
「みなさん、
空間演出課に配属となった
三名の新入社員を紹介します」
千景さんが新入社員たちを前へ促す。
「分からないことや
困っていることがあれば、
サポートをお願いしますね」
わたしは自分が配属された頃を思い出し、
どこか懐かしい気持ちでその様子を見ていた。
紹介が終わり、
それぞれの席へ向かおうとした時だった。
「真壁先輩」
後ろから声を掛けられ振り返ると、
先ほど紹介された
新入社員の一人が立っていた。
凛とした顔立ちの犬族の男の子だ。
「あなたは……」
そう言った瞬間、
彼は大きく目を見開いた。
「えっ!?
さっき自己紹介したのに
覚えてくれてないんですか!?」
ものすごくショックを受けた顔をしている。
彼の犬の耳が、
しゅんと寂しげに垂れ下がった。
「ご、ごめんなさい」
わたしが慌てて謝ると、
彼は大きなため息をついた。
「ちゃんと覚えてくださいね。
俺、朝比奈陽向っていいます」
ぺこりと頭を下げる。
「ごめんなさい。わたしは真壁唯衣です」
わたしも慌てて頭を下げ返した。
「アシスタントなので
あまり教えてあげられることは
ないかもしれませんが、
よろしくお願いします」
そう伝えると、
陽向は納得したように頷く。
「だからだったんスね。
先輩、
導入研修の時も全然見かけなかったから、
なんでだろうって思ってたんッス。
アシスタントなんですね?」
「あの……」
わたしは首を傾げた。
「わたしたち、
どこかでお会いしました?
ごめんなさい、覚えてなくて……」
その瞬間、陽向は再び固まった。
数秒後、
「ショック……」
と本日二度目の衝撃を受けている様子。
耳が完全に寝てしまっている。
思わず笑みがこぼれそうになる。
「そんなに?」
「そんなにです!」
即答だった。
「導入研修の時、
俺めちゃくちゃ緊張してたんスよ。
でも先輩だけ笑いかけてくれて
『大丈夫、みんな緊張してるから』
そう言われて、
ちょっと救われたんです。
だから覚えてると思ってました」
あぁ、何となく思い出した気がする。
でも確信が持てないわたしの顔を見て、
陽向は肩を落とした。
「まぁ、いいッス」
そしてすぐに顔を上げ、
にっと笑った。
「俺、しつこいんで。
今度は覚えてもらいます」
そう言う朝比奈くんの後ろで、
柴犬のしっぽが楽しそうに左右へ揺れていた。
ブックマーク 評価 嬉しいです。
ぜひお願いします。
本編の裏側や、レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。
小説の合間の息抜きにどうぞ。
X「真壁レオは今日も重い」
@reo_yui_archive




