新しい生活4 真壁唯衣
その日の夜。
わたしは自分に用意された部屋ではなく、
レオの部屋で眠ることにした。
一週間、
ずっと一緒に過ごした部屋。
まだレオの匂いが残っている気がしたから。
部屋へ入った瞬間、
携帯が鳴った。
レオからだ。
北米とは十三時間ほどの時差がある。
きっと、
向こうに着いたばかりなのだろう。
「レオ?」
「……もう着いた?」
「さっきな」
少し疲れた声。
でも、どこか嬉しそうだった。
「唯衣が部屋に入った頃だと思って電話した」
「何で分かるの?」
思わず笑うと、
レオも小さく笑った。
「二年も一緒にいるんだ。
それくらい分かる」
「……机の上のカメラ、見えるか?」
「あっ」
視線を向けると、
夏の旅行へ持って行ったあのカメラがあった。
「懐かしい」
「いっぱい撮ったね」
「だろ?」
レオの声が、少しだけ優しくなった。
「起動してみろ」
言われた通りに電源を入れる。
「ベッドの横に置いて。
レンズを天井へ向けてみて」
「こう?」
「そう」
次の瞬間、
天井いっぱいに映像が広がった。
海辺を歩いた日。
二人で笑った日。
手を繋いで歩いた日。
一緒にご飯を食べた日。
わたしの知らないところで
撮られていた写真まで混ざっている。
「えっ! いつ撮ったの!?」
「全然気付かなかった!」
電話の向こうで、
レオが楽しそうに笑った。
「だろ?」
映像が切り替わった瞬間、
ふわりと懐かしい匂いがした。
夏の潮風。
二人で泊まった部屋。
お風呂上がりのシャンプーの香り。
そして、
レオの匂い。
「……レオ」
思わず呟く。
遠く離れているはずなのに、
まるで隣にいるみたいだった。
「覚えてるか?」
レオが静かに言う。
「あの時説明しただろ。
写真だけじゃなくて、空気ごと残すって」
「うん……」
目の奥が熱くなる。
「レオ、すごく嬉しい」
小さく言うと、
電話の向こうで少しだけ間が空いた。
「唯衣」
優しい声だった。
「寝るまで毎日電話する。
寂しくなったらそれを見ろ。
俺も向こうで見る」
胸がいっぱいになる。
レオはちゃんと分かっていたのだ。
わたしが今、
一番寂しい時間を。
「おやすみ」
「おやすみ、唯衣」
電話が切れたあとも、
部屋にはあの日の思い出が広がっていた。
レオの匂い。
二人で過ごした時間。
遠く離れているはずなのに、
少しも一人じゃない。
気付けば頬を伝う涙は、
寂しさだけのものではなくなっていた。
本編の裏側や、レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。
小説の合間の息抜きにどうぞ。
X「真壁レオは今日も重い」
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R18のみを詰め合わせた
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