白石家に挨拶に行く3
4人はソファに座り、レオが話し出す。
「急なお話で申し訳ありません」
レオは真っ直ぐ父と母を見た。
「この春、海外赴任が決まりました」
「その前に」
一度言葉を区切る。
「唯衣さんと結婚してから
海外へ行きたいと思っています」
「本日はお許しをいただきたく、
お時間を頂戴しました」
リビングが静かになる。
すると
「お父さん、お母さん」
唯衣が口を開いた。
「プロポーズしたの、わたしなの」
レオが横で固まる。
「一緒にいる証が欲しくて」
少し照れながら笑った。
父も母も黙って聞いている。
やがて
父が静かに尋ねた。
「海外には唯衣も行くのかい?」
「いえ」
レオは首を横に振る。
「最初は私一人です」
「生活基盤が整ったら迎えに行く予定です」
母が今度は唯衣を見る。
「唯衣」
「一人で大丈夫なの?」
心配そうな声だった。
唯衣は少しだけ考える。
そして
「大丈夫じゃないと思う」
正直に答えた。
母が目を瞬く。
「でも」
唯衣は続ける。
「大丈夫にならないと」
「レオの隣には立てないと思うの」
「だから頑張る」
母はしばらく娘を見つめていた。
そして
ふっと笑う。
「あら」
「寂しがり屋の唯衣にしては
格好いいじゃない」
唯衣は少し照れた。
その時だった。
「レオくん」
父が穏やかに口を開く。
「結婚には反対しないよ」
レオが顔を上げる。
「唯衣が選んだ人なら大丈夫だ」
だが
レオは小さく首を振った。
「いえ」
「お伝えしなければならないことがあります」
水色の瞳が真っ直ぐ向けられる。
「私は獣人族です」
お父さんとお母さんが目を瞬く。
「狼族です」
静かな沈黙。
「種族が違います」
レオは拳を握った。
「それでもお許しいただけますか」
父と母は顔を見合わせる。
レオの表情が少しだけ曇った。
「子供も授かれません」
「それでも」
「必ず幸せにします」
「どうか許していただけませんか」
深く頭を下げる。
しばらく沈黙が続いた。
やがて
父がゆっくり口を開く。
「レオくん」
「はい」
「正直、驚いている」
レオの肩が僅かに落ちる。
「はい」
「当然だと思います」
だが
次の言葉は予想外だった。
「いや」
父は首を傾げる。
「それがどうしたんだい?」
「……え?」
今度はレオが固まった。
「種族が違うことが問題なのかい?」
「私は人族ではないので」
「うん」
「だから?」
レオは言葉を失う。
父は穏やかに笑った。
「レオくん」
「種族が違うことも」
「子供ができないことも」
「反対する理由にはならないよ」
静かな声だった。
けれど
とても力強かった。
「人族同士だって」
「子供のいない夫婦はいる」
「同性同士で生きていく人たちもいる」
「家族の形なんて一つじゃない」
父は唯衣とレオを見る。
「大切なのは」
「二人が一緒に生きたいと
思っているかどうかだろう?」
レオは言葉が出なかった。
ただ
水色の瞳が大きく揺れていた。
「それぞれの愛の形でいいんだよ」
父はそう言って優しく笑った。




