唯衣が怒ってる訳2 真壁レオ
「ただいま……」
返事はない。
リビングも
台所も
電気はついていなかった。
胸がざわつく。
だが
唯衣の気配はした。
家にいる。
それだけで少しだけ安心する。
「ふぅ……」
小さく息を吐く。
よし
ちゃんと話そう。
コンコン。
レオは唯衣の部屋の扉をノックした。
「…唯衣」
「入るよ?」
返事はない。
けれど。
逃げるわけにはいかなかった。
足が少し震えている。
レオはゆっくり扉を開けた。
部屋の中も暗かった。
カーテンの隙間から
差し込む夕暮れの光だけが、
ぼんやりと室内を照らしている。
「唯衣?」
ベッドの上に人影が見えた。
仕事着のまま。
唯衣が小さく丸くなって横になっている。
胸が痛んだ。
体調が悪いのだろうか。
それとも
本当に怒っているのだろうか。
レオはゆっくり近付く。
起こさないように。
怯えさせないように。
そっとベッドの縁へ腰を下ろした。
「唯衣……」
返事はない。
レオは恐る恐る手を伸ばす。
いつも通り。
髪を撫でようとして。
その瞬間だった。
ぱしっ。
避けられた。
レオの手が空を切る。
時間が止まる。
避けられた……
唯衣に……
初めて……
レオは固まった。
心臓が嫌な音を立てる。
さっきまでの不安が一気に現実味を帯びた。
「……ぐすっ」
小さな音がした。
「ゔっ……」
鼻をすする音。
唯衣は思わず振り返った。
そして
固まる。
「えっ!?」
ベッドの傍に座るレオの頬を、
涙が次々と伝っていた。
止まらない。
まるで壊れたように溢れている。
「な、なんでレオが泣くの!?」
唯衣は慌てて起き上がった。
偽番薬の時ですら。
あれほど苦しんでいた時ですら
レオは一滴も泣かなかった。
そのレオが。
今。
子供のように泣いている。
「もう!」
「怒ってるのはわたしなの!」
慌ててレオの肩を引き寄せる。
ぎゅっと抱きしめた。
「泣かないで、レオ」
その言葉に
レオは唯衣へしがみつく。
「ゆ……唯衣が……」
しゃくり上げる。
「なんで……」
ひくっ。
「怒ってるのか……」
ひくっ。
「分からなくて……」
完全に限界だった。
唯衣は思わず目を閉じる。
違う。
そうじゃない。
怒っているのは事実だけれど。
泣かせたいわけじゃない。
唯衣はさらに強く抱きしめた。
背中を優しく叩く。
「大丈夫」
「ちゃんと話すから」
「だから泣かないで」
まるであやすように。
何度も何度も背中を撫でた。
本編の裏側や、レオと唯衣の甘い日常をXで更新中です。
小説の合間の息抜きにどうぞ。
X「真壁レオは今日も重い」
@reo_yui_archive




