真壁家に挨拶に行く1
二人に日常が戻っていた。
二人で目覚め
会社へ出勤し
夕食を共にする。
当たり前だったはずの毎日が、
今は何より愛おしい。
泰山先生の診察も、
一週間に一度になった。
獣神化の影響もあるため、
しばらくは定期的に経過を
見た方が良いとの見立てらしい。
そして
レオは以前にも増して元気になっていた。
仕事量も増えた。
むしろ以前より働いているのではないかと、
第五統合の全員が呆れるほどに。
もっとも
元気になったのは仕事だけではない。
「レオ!」
「本当に明日出勤なの!」
「手加減して!」
わたしは半分泣きながら訴えた。
「唯衣が鳴くと燃える」
レオは悪びれもせず答える。
「唯衣の身体が悪い」
意味が分からない。
本当に分からない。
けれど
結局のところ
わたしもレオを求めているのだから、
強く反論できないのが悔しい。
そんな穏やかな日々を過ごしながら。
わたしは少しずつ、
レオのことを教えてもらっていた。
獣人族のこと
真壁家のこと
そして
レオ自身のことを。
真壁家は獣人族の宗家。
お祖父様は獣人族を束ねる長なのだという。
お父様は家を出ており、
幼い頃から一緒に暮らしてはいない。
お母様はレオを産んですぐに亡くなられた。
だから
レオはお祖父様に育てられたのだそうだ。
そして
その頃からずっと側にいたのが景さんだった。
「じぃさんは過保護なんだよ」
レオはうんざりしたように言う。
「帰りが遅いと連絡が来るし」
「どこへ行くのか聞かれるし」
「気付けば景が迎えに来る」
「絶対、じぃさんの差し金だからな」
本人は本気で嫌そうだった。
「だから家を出た」
レオは真顔で頷く。
お祖父様は
きっと誰よりもレオを大切に思っている。
そんな気がした。
そんな話をする日が続いた。
そしてある日の夕食。
レオがふと口を開く。
「じぃさんに紹介したい」
「ゴホッ、ゴホッ!」
思わず咳き込む。
危うく飲み込んでいたスープを
吹き出すところだった。
「えっ?」
「びっくりした……」
レオは少しだけ困ったように笑う。
「唯衣が嫌じゃなかったら会ってほしい」
「祖父で」
「育ての親なんだ」
その言葉に。
唯衣は自然と背筋を伸ばした。
レオのお祖父様。
獣人族を束ねる長。
そして
レオを育てた人。
少し緊張する。
けれど
逃げたいとは思わなかった。
唯衣は姿勢を正すと、 にっこりと微笑んだ。
「もちろん喜んで」
「会わせてもらえるなら嬉しい」
その返事を聞いた瞬間。
レオは少しだけ安心したように目を細めた。
そして
少しだけ間を置く。
「そのあと」
「唯衣のご両親にも挨拶したい」
唯衣が目を瞬く。
レオは真っ直ぐ続けた。
「唯衣を貰うこと」
「ちゃんと伝えたい」
一瞬
言葉が出なかった。
胸の奥が熱くなる。
嬉しくて
幸せで
少しだけ照れくさい。
唯衣は笑った。
それから何度も頷く。
「うん!」
「すごく嬉しい!」
そして
満面の笑みを向けた。
「レオのお嫁さんになる!」
レオが一瞬固まる。
そして。
堪えきれないように笑った。
「知ってる」
そう言って
唯衣の頬を優しく撫でた。
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X「真壁レオは今日も重い」
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