真壁レオ9
「……すまない。待たせたか?」
数分後。
空間演出課へ戻ってきたレオは、いつもの落ち着いた顔をしていた。
さっきまで統括室で脳内大騒ぎしていた男と同一人物には見えない。
「いいえ。送って頂きありがとうございます」
唯衣は立ち上がり、丁寧に頭を下げた。
レオは小さく頷く。
「下のエントランスに車を回す」
低く落ち着いた声。
「外には出るな。エントランスで待ってろ」
「え?」
唯衣はきょとんとした。
「……はい。かしこまりました?」
少し首を傾げる。
その反応に、レオはわずかに眉を寄せた。
「何かあってからじゃ遅い」
真面目な顔。
かなり真剣だ。
まるで当然のように言う。
唯衣は一瞬、ぽかんとしてしまった。
統括って。
こんな顔するんだ。
普段は冷静で、近寄りがたい印象しかなかったのに。
改めて見ると、整いすぎるくらい綺麗な顔をしている。
白銀の髪。
鋭い目。
低い声。
無駄のない立ち姿。
まるで映画のワンシーンみたいだった。
「……?」
視線に気付いたのか、レオがこちらを見る。
「あ、いえ!」
唯衣は慌てて視線を逸らした。
胸の奥が、少しだけ変に騒いだ気がした。
その意味を、まだ唯衣は知らない。
一方その頃。
レオの脳内では。
(見た)
(今、俺のこと見てた)
(やばい)
(死ぬ)
脳内で獣が転がっていた。




