真壁レオ8
急いで統括室へ戻る。
ドアを閉める。
施錠。
遮断モード。
まず最初に確認するのは耳としっぽだ。
「……よし」
出てない。
耳も、しっぽも隠れている。
深呼吸。
もう一回。
落ち着け。
俺は第五統合統括管理官。
ただ女を送るだけだ。
何も問題ない。
「……問題しかない」
思わず独り言が漏れた。
レオは脳内PCを開く。
高速検索。
この時間から開いている店。
人族の女が喜びそうな店。
静か。
清潔。
警戒されない距離感。
「酒は駄目だ」
俺が車だ。
それに、酔わせたい気持ちはあるが、一緒に帰れなくなるのは論外。
「あそこはもう閉店……」
「パスタは危険か」
ソースが飛ぶ可能性がある。
服が汚れたら最悪だ。
「あそこは雰囲気が微妙」
「いや近すぎると下心っぽい」
「待て、重い」
脳内会議が止まらない。
なんで決まらない。
普段なら都市一つの導線設計を十分で終わらせるのに。
「……俺、事前リサーチしとけよ」
珍しく本気で後悔した。
番じゃない。
ただの人族。
なのに。
どうしてこんなに必死なんだ。
その時、時計が視界に入る。
まずい。
早く戻らないと帰られる。
レオは即座に立ち上がった。
店はまだ決まっていない。
だが今、一番優先すべきは。
白石唯衣を確保すること。
統括管理官とは思えない速度で、レオは廊下を歩き出した。
表情だけは、完璧に涼しい顔のまま。
ただし歩く速度はかなり速かった。




