それぞれの戦い 真壁レオ1
偽番薬吸引から約四時間経過
脳がやけそう。
気持ち悪くて吐きそう。
違う匂いを探している。
あの匂いをもう1回直に嗅いだら収まるのか。
あいつの淫靡な姿を脳裏に過ぎる瞬間、
「うぇっ」
吐く。
吐いても吐いても楽にならない。
はぁはぁ、はぁ、
これは久しぶりにヤバいかもしれない
そう感じた。
眠りに落ちたら
もっと疲弊する。
四肢をもがれる夢
脳天を斧で裂かれる夢
首をはねられる夢
キリがない。
「うぇっ」
もう胃液しかでてこない。
「若、しっかりしてください」
「まずは鎮痛剤を」
「四時間あけて睡眠導入剤をのみましょう」
部屋にそっと景が入ってきた。
薬を飲んでまた布団に横になる。
おでこに腕をあてて
目をつぶる。
唯衣、唯衣、唯衣、、、
そんな時だ。
唯衣の匂いがした。
唯衣が今日着ていた服。
はぁ、はぁ、
少しマシになった気がした。
「さすがに下着はもってこれませんでした」
「申し訳ありません」
景はたんたんと言う。
「それに触った時点で死刑…」
俺以外が触るとかありえない。
一時間ほど経った頃。
ようやく少しだけ楽になってきた。
身体を起こし、
ベッドの上でノートパソコンを開く。
確証はない。
あるのは理論と化学式。
そして自分の経過データだけだ。
それでも
今できることは全部やる。
仮説。
構造式。
症状の推移。
思いつく限りの情報をまとめ、
送信する。
宛先は一人。
朝倉環。
送信ボタンを押したあと、
深く息を吐いた。
「ふぅ……」
その時だった。
「若、四時間経ちました」
景が静かに部屋へ入ってくる。
「睡眠導入剤を」
そしてもう一つ。
「それと、唯衣様の枕カバーです」
レオはゆっくり顔を上げた。
「お前、寝室に入った?」
「まさか」
景は即答する。
「唯衣様がお休みになる前に、
交換していただきました」
「わたくしを変態扱いするのはやめてくださいませんか」
「いや、お前、かなり変態だろ?」
景は深いため息を吐いた。
「はぁ……若」
「ご自身を省みてください」
「貴方様が世界一です」
レオは一瞬だけ考える。
そして
「それは否定できないな」
枕カバーを抱き寄せる。
ふわりと唯衣の匂いがした。
少しだけ呼吸が楽になる。
景は薬を飲ませると、
それ以上何も言わず部屋を出ていった。




