それぞれの戦い 榊 景1
タイムリミットまで残り五日
漆黒の空を急いで羽ばたく。
頭の中では、
すでに何人もの名前が並んでいた。
誰を呼ぶべきか。
誰なら若の理論を理解できるか。
誰なら、この短期間で結果を出せるか。
適任者は十名ほど。
明日の朝一番には第五統合生活支援事業部へ到着できるよう、段取りを組まなければならない。
一日
一時間
一分
遅れるごとに、
解毒薬完成の可能性は削られていく。
今の自分にできることは一つだけだ。
知能を集めること。
技術を集めること。
若へ辿り着く最短の道を作ること。
翼へ力を込める。
速度を上げすぎて身体が軋んだ。
おそらく瞳の色も濃く変化しているだろう。
そんなことはどうでもよかった。
早く。
一秒でも早く。
次の一手は自分にかかっている。
夜風を切り裂きながら、
ふと口元が緩んだ。
若とああして軽口を叩き合ったのは、
何十年ぶりだろう。
幼い頃と変わっていない。
負けず嫌いで
素直になれなくて
不器用なところも
本当に可愛らしい。
いつからだったか。
若は笑わなくなったのは。
表情が消えた。
言葉から温度が失われた。
家を嫌いになり
側に仕えることを拒み
そして姿を消した。
……もっとも
居場所も無事も、すぐに把握していたのだが。
陰ながら見守り続けていた。
だからこそ思う。
今の若の方が好きだ。
唯衣様を見つめる時の目が好きだ。
あの頃にはなかった温度がある。
守りたいと願う相手がいる。
共に歩きたい未来がある。
だから
ここで助けられなければ世話役ではない。
若が守りたいものを守る。
若が若でいられるように。
そう言い聞かせながら。
榊景は、漆黒の闇を翔けた。
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