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盗賊は聖女に愛される  作者: ton
3章
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出航!


「お~!ルーベンダールが遠くなってくな~!!」


甲板の先で遠くを見ながらシルヴィが感嘆の息を漏らす。


「危ないからあんまり端まで行くな。落ちるぞ。」

その華奢な肩に手をかけて引き寄せれば、ふへへぇ~と、嬉しそうにとろけるような笑顔を浮かべて俺に抱き着いてくる。

うっ…可愛い…!


「なによなによ~見せつけちゃってぇ!ずるいわずるいわ~!!」

「……フェイ、お前楽しくなってきてるだろ…。」

「フェイ!!ザイラスはあたしのものだ!渡さないからな!」

「何ですって!負けないわよ!!!」

「いや、何争う必要あるんだよ…。」


フェイはこなれた旅姿…そう、まだ女装を続けていてシルヴィの真似をしながら俺の背中に抱き着いてくる。

そしてその女装姿はなんと俺も…なのだ。



なんで!!なんでだ!!!



「だあってぇ!!女性の方が優しくしてもらえるんですもん、この船!

乗船もレディース価格で半額だし、三食全て半額なのよぉ!すっっごいお得!!」

「はぁ…通常の価格で乗せてもらえる位には稼いだだろうが。この守銭奴が。」

「いやあん、節約家って言って♥」

「余った金額投資に回すなよ!無駄なモン買うなよ!賭博なんかするんじゃないぞ!!!」

「へいへ~い♪」


この船に乗るという話をしたら、リリーからお別れの餞別とばかりに持っていた服を大量にもらった。

フェイはノリノリで黄色の小花がプリントされた春色のワンピースに同じ柄のヘッドリボンをつけているし、シルヴィも白いレースがふんだんに使われている薄いピンク地のワンピースに同じ地の帽子を被っている。

そして俺はリリーの亡くなった母のものであるという、紺地のロングドレスに顔が隠れるくらいの広いつばのついた帽子だ。


ああ…リリーのキラキラとした嬉しそうな目と、リリーの親父さんの俺を見る熱のこもった瞳はある意味で忘れられそうにない…。

船酔いよりもタチの悪い酔いに俺は苦しめられた。



「で??この船どこに向かってるんだ??」

シルヴィが甲板正面に飾られた、額に入った大きな地図を見上げると、隣でフェイが地図を指さして説明する。


「ここが今までいたルーベンダールだろ?

この船は海を北西に上ってここ、リーデン共和国に入る。」

「おおっ!!別の大陸に入るのかっ!?」


リーデン共和国はいくつかの国が連なって和平を結んでいる連邦国家だ。

本でしか読んだことはないが、色んな人種や種族が入り混じった国の割には、比較的平和な国だと聞く。

…まぁ、この国でも聖女信仰が当たり前だから、当然黒は忌み嫌われているけれど。


「ここで少し休憩とったら今度は北の島国に向かう。この小さいとこな。」

「ほうほう。」

「ここへは週に1回くらいの定期便しか出てないはずだから、買い物もリーデンでたくさんしていかねぇとな!」


わはは とフェイがそう言って笑った時、ぐおん と目の前が斜めに傾いだ。



「な?!!!」



ドシン と重い音が舟事体を揺らがせる。

俺はとっさにシルヴィを抱え込んで受け身をとった。


「いってえ…!なんなんだよ一体…!!!」

「……。」


舟が何かにぶつかった音。

こんな音は鯨なんかの海洋生物にぶつかって出る音じゃない。

何か大きな魔物と化した巨大生物か、あるいは……。



俺は甲板に繋がるドアを少しだけ開いて開けた。




「……ご苦労。よくやってくれた。」



見えたのは分厚い札束が受け渡される現場。

そしてその札束を受け取っているのは……この船に乗るときに一度だけ目にした、この船の船長だ!!


隣にはこの船よりはるかに大きい舟が横付けされ、俺達と一緒にこの船に乗っていた女性たちが兵士に連れていかれている。



計られた!!!!



女性向けと称して安い乗船賃で女性ばかりを乗せさせたのは…人身売買の為か!!



「さぁて。驚いて隠れている方もいるみたいですから、小鳥探しといきましょうか。」



船長に札束を渡していた、その人物が振り向く。

その人物は、

ウェーブした赤い髪をなびかせ、黒い軍服に隻眼の眼帯をつけた…真紅の口紅の…



女性、だった……。











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