ごまかし
シルヴィ目線です。
きっとあの船にはあの二人が乗っている。
わたしの保護者の、ラクスとリードが。
舟を見てそう思ったら、案の定甲板にラクスを見つけた。
王様になったはずなのに、相変わらず自由。
まぁ、それがラクスなんだけど。
そうなると、とる行動はひとつだ。
「シルヴィちゃん、いきなり荷物漁って何する気?」
「女装するんだ」
「……誰が?」
「フェイとザイラス」
有り難いことに女装セットは宿から変装用にいくつか持ってきていた。
「……えーっと、突っ込みどころは満載なんだけど、やった方がいい理由があるんだな?」
フェイの言葉にコクリとわたしは頷いた。
ラクスは相当の女好きだ。
そりゃもう妹のように可愛がってもらったわたしを、まさかいずれ嫁にしようと考えているくらいの。
あああ変態。
……本当、リードかわいそう。
女であればどうあれ殺されることはない。
リードは聖魔導師だから、ザイラスを回復できる。
どうにかうまくやって、ザイラスを回復させてもらわなきゃ!
…リード、まさか天敵の魔王を回復したなんて知ったら、怒るんだろうな~…。
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なんとかうまく丸め込んで、ザイラスをリードに回復してもらった。
…まさかラクスがザイラスを嫁にするって言い出すのは予想外だったけど…。
イケメンは女装すれば美女になるんだわ。
「シルヴィ、なんでルーベンダールを出ていったの?
理由を教えてもらえる?」
静かにリードが尋ねてくる。
リードはラクスと違って頭がいいから嘘をつくと大抵バレる。
慎重に、バレないような嘘をつかないと…。
そう思うとやけに緊張して頭がグルグルしてくる。
「えぇ~っと…。」
「シルヴィさんは悪い商人に拐われて、このあたりまで連れてこられたんですわ」
振り向くと、フェイが溜息をつきながらリードに話しかけていた。
「町にお忍びでお出掛けしたら、そこで捕まったみたいで、そのあとこの辺まで運ばれちゃってたみたいなんです。
私とラースが、向こうの町でお買い物していた時に、荷馬車に猿轡噛まされて動けないシルヴィさんを見つけたんです。
も~!びっくりしちゃってぇ!
慌てて悪者が来る前に私達で救いだしたんですけどね、追いかけられてこーんな遠くまで逃げてきたんです!
そしたらここって監獄じゃないですかぁ。
助け求めて門を叩いたはいいものの、どうやら中でひと悶着あったみたいでぇ、看守さんに開けてもらって入ってみたら凄い暴動が起きてて、さっきまで隠れてたんですよぉ。
もうどこか行っちゃったかなぁと思ったらひとり残ってたみたいでぇ、ラースがやられちゃったんですね。
そしたら襲ってきた悪者からシルヴィさんが魔法で助けてくれたんです!ね!この天井すごいでしょ!!!
スゴーい威力の魔法ですね!助かっちゃいましたぁ!!」
一気に言い切ったフェイは一辺の曇りもない満面の笑顔だ。
「そっ…そうでしたのね。
シルヴィ、よくやりましたね。」
…リードが騙されてる。スゴい。
「そうすると、看守や罪人も見えないようですが、どこに行ったかはわからないのですね」
「…ああ」
「そうですか、困りましたね。新しく収監する罪人も連れてきているのですが、連れて戻らなければいけませんね。」
「あっ!すいません、そのなかに、この子のお父さんが冤罪で捕まっていると思うんですけど!
ここの入り口で、出会った子なんです!」
そう言うと、フェイはリリーを前に押しやった。
「冤罪?」
「あっ…あの…っ、神殿の宝箱を開けたっていう罪で鍵師の父が捕らえられてるんですけど、父は依頼されたからやっただけで悪気はないんです!こっ…これ!嘆願書ですっ!!」
リリーはリードに嘆願書を出して渡した。
「そうですか、困りましたね。罪として裁かれたわけですし…。
彼の者を連れてきて下さい。」
リードが話すと、従者がリリーの父らしき人を連れてきた。
「お父さんっ!!」
「リリー?!なんでここに!!」
リリーに似た髪色の、痩せた髭の男性がリリーに向けて手を伸ばすも、従者に阻まれた。
「いい、放してやれ」
そういい放ったのはラクスだ。
「そいつはやってないだろう、放してやっていい」
「王、いくらなんでも勝手には…。」
困るリードに、ラクスは言い切った。
「悪者かどうかなど、目を見れば分かろうが。」
フン と鼻を鳴らす。
勇者の血を引く鋭い目の男。
溢れでるカリスマ性。
いくらバカでも、獅子の王という名は伊達ではないのだ。




