嫁
シルヴィに連れていかれたのは最上階。
角の看守長室を開けると、驚く光景が目に入った。
半壊に近い壊れた天井。
そういえばここに来るまでにも看守一人にだって会わなかった。
一体何があったというの?
「リード、この人の容態を見てくれ」
そう言われ、この空間に3人の人がいた事に気づく。
茶色いボブヘアーの民間人っぽい女の子。
あとは…ちょっと狐目の、髪をアップした細めの女の人。
シルヴィよりは…歳上の女の人なのかしら。
弓をもっているから、狩人なのかもしれない。
一番びっくりしたのが、狩人の女の人が支えている人。
息も絶え絶えという様子のその人は、ネイビーブルーの長い髪に、黒レースのロングドレスを纏って、肩にはショールを羽織った、
…凄く美しい、美女だった。
「リード!!!この人は絶対救え!!!
俺の3人目の嫁にする!!!!!」
ハイ!言うと思ったーーーーー!!!
とりあえず、さらりと無視するに限る。
「でもシルヴィ、貴女の光魔法の方が強いんだから、私の聖魔法より回復が早いんじゃないの?」
「あーっと…… この人ちょっとわたしの魔法が合わないみたいで、調子が戻らないんだ!」
「?そうなの?」
シルヴィの魔法が合わないということは余程繊細なのだろう。
シルヴィの光魔法はよくも悪くも強い。
その人の生命力を一気に解放させ、超活動状態にする光魔法は、確かにこの弱っている人にとっては辛いのかもしれない。
「わかったわ、やってみるわね」
繊細みたいだから、まずは軽くヒールをかけてみる。
うん、少し眉間の皺がとれて、楽にしているように見える。
その後ハイヒールを数度かけ、うっすらとその美女は瞳を開ける。
「ザ……、
ラース!!!」
シルヴィが涙ながらに駆け寄って、その手を掴む。
ラースさんと言われたその人は、まだ言葉を出せるまでには回復してなかったようで、シルヴィの姿を見てホッとしたのか、微笑むとまた、ゆっくり瞳を閉じて寝てしまった。
びっくりしたのはシルヴィの様子だ。
ラースさんにかなりなついているのか、子供みたいに涙を流して泣きじゃくっている。
あの日、人買いに買われて牢に繋がれ、感情のなくなったモノのように死んだ目をしていたこの娘が。
私たちの前でさえ、こんなに感情を露にしたことなどなかったように思う。
そういえば、シルヴィは男性と一緒にいたという話があがっていたが、それはもしかしてラースさんの事だろうか。
ラースさんなら背も高いし、洋服によっては勘違いすることも頷ける。
「やっべぇ……女神光臨……。」
……取りあえずはシルヴィからよく話を聞いて、このバカを締めるところから始めましょうか。




