過去の負債
「ザイラス!!!!」
シルヴィの声に揺り起こされるように、意識がリアルになる。
「あ…あ…」
ガクガクとする、身体の震えを止められない。
この手で、胸元を掻き毟りたい衝動に駆られる。
焦点の定まらないまま、震えてガクリと膝をつく。
「ザイラス、どうしたんだ?!!」
シルヴィが俺の近くに寄り、手をさしのばした。
…だけど。
バシッ
「え…?」
「あ…。」
俺は無意識に、シルヴィの手を払い除けていた。
シルヴィはまんまるい瞳で俺を見ている。
「どうやら思い出したかな?
出来損ないの魔王くん。」
ニヤニヤと、少年は椅子に座り俺を見ていた。
「君は途中で君の役目を放棄した。
それから“魔王”になったのは この僕だ。」
…あの黒い影が、この少年?
「君は僕に恨みや悲しみだけを押し付けて逃げた。
勇者にあのときは討伐されてしまったけど、君が覚醒したことで僕もまたこの世界に目覚めることができた。
まぁ、それだけは感謝してもいいよ。」
ふふっと黒い笑顔で笑う“魔王”。
「ただ、もうその女と接触してるなんて思いもよらなかったけどね。
よく思い出してよ。
君をそこまで追い詰めたのって、誰のせい?
僕は一番君の悲しみも苦しみも知ってる。
気が狂うほど辛い日々を、誰よりよく分かってる。
たったひとりで、光りも失って闇のなかで生きるのは、いくら闇の王として生まれた君でも辛かったよね。
ましてや、愛するひとを殺さなければならなかった君の苦しみは、誰にも分からない…だろ?」
チラリ とシルヴィを見る“魔王”。
シルヴィは俺を見て、固まっている。
「あ…あ、あ…」
大粒の涙が、シルヴィの瞳から溢れた。
「だから、君の言うことは聞けない。
…その女だけは、ここで消す!!!!」
再び、魔王はすごい勢いでシルヴィに向かっていく。
アイツが俺の分身なら、確かにシルヴィをこの世から消してしまえる俺以外の唯一な存在だ。
だとしたら…
頭の中に絶命したシルヴィが思い浮かぶ。
ゾワリと背筋が凍った。
また、亡くすのか。
大切な人を。
「やめろぉっ!!!!!」
身体が先に動いていた。
シルヴィを狙った魔王の前に俺は飛び出す。
俺の身体の中央には。
漆黒の闇で覆われた魔王の手刀が。
「い…いやぁぁああぁあ!!!!!!!!」
ズポリ と俺の身体を貫いていた。




