ザイラスの記憶
雨が降っている。
しとり
しとり
しとり。
あれから何日たったのだろう。
毎日目の前には白黒のノイズがかかっている。
眠りから覚めると、なぜ自分がここにいるのかと後悔をしていたのは少し前までの話。
今はもう、何も感じない。
自らの命の終わりを願った彼女は、跡形もなく消えてしまった。
そして消したのは
俺だ。
「あ…あははは…
あははははは……」
彼女はもう限界だった。
今まで花が咲くように笑っていた笑顔は、砂を噛むような表情を見せるようになっていて。
彼女が言い出さないだけで、俺はわかってた。
なぜなら俺と彼女は光と闇。
表裏一体の存在なのだから。
だから、彼女が自らの死を懇願してきたとき。
もう、何も言えなくて。
ただ、救ってあげたかった。
それだけだ。
それだけだったんだ。
黒く長く、破けたローブを引きずって、今日も俺はあの追いかけてくる勇者からこの身を隠す。
雨は次第に強くなり、長く伸びた黒い髪も、全てを濡らして。
ただずるずると、歩く。
どこへ?
どこへいけばいい?
彼女がいなければ もうどこにも
どこにも居場所なんてない。
ないんだ。
「あ…うぁ…
うぁあああぁああぁああ!!!!!!!!!!」
狂ったのは、いつからだった?
もうずっと、狂ってた。
黒い闇が、俺の足元から広がる。
いくつもの街が闇に呑み込まれて、消えて。
俺は本当に、たくさんの命を奪う、魔王になっていく。
嫌だ…
そんなのは…嫌だ…!
そう、抵抗する心も暗い闇に呑み込まれ消えて。
意識が遠退いて。
いつかの彼女の笑顔が、弾けて消えた。
「見つけたぞ!魔王!!!!!」
「ちょっと!なんなの…あれ…本当に魔王??」
「……そうだよ、あの濃い闇の気配は、魔王以外に考えられない。」
勇者の前には。
瞳だけが仄紅く光る、黒い闇の影で型どられた漆黒の魔王がいた。
…血の涙を流して。




