パンドラの箱
ガキン!!!!!
呆けた少年の隙をついて俺は剣技を繰り出す。
「ちょっ……!」
少年は黒い闇を手の甲側にシールドのようにして俺の剣を弾いた。
でも…弾かれるのは想定の内だ!
「ぐうっっっ!!!」
踏みとどまった片足を軸に、もう片足で蹴りを入れる。蹴りは少年の脇腹に決まった。
「そうだ、そのままおとなしく…」
「っ…ふざけんなあっっ!!!!!」
少年はキッと俺を睨む。
瞳の色が揺らめくと、その手から黒い刃を今度は放射線状に放った。
「くっ…!!!」
身体に裂傷が増える。
「きゃあっっ!!!」
「シルヴィ!?」
「痛っ……」
悲鳴に振り返ると、シルヴィの頬からたらりと血が流れるのが見えた。
「大丈夫か!?シルヴィ!!」
駆け寄り、傷を見ると、頬の他に腕にも裂傷を負って、血が滲んでいた。
「ザイラス、大丈夫だ。一応結界を張ってたんだが、暗黒魔法はわたしの魔法では防ぎきれなくて…。
それより、ザイラスの怪我のほうが酷い。まっててくれ。」
シルヴィが俺の額に自分の額を当てると、キラキラとした光の粒が俺の周りを舞い散る。
気がつけば、俺の傷も、シルヴィの傷も全て治っていた。
「ははっ…はっ
あっははははははっ!!!!
聖女!本当に聖女か!!!!」
いきなり笑いだした少年。
な…なんだコイツ。
何笑って…。
「ねぇ、なんでアンタ、その女と一緒にいるワケ?
ねぇ、馬鹿?馬鹿なの?」
少年は俺を見下すように、下から見上げた。
訳のわからないことを言い出す少年に、気持ちの悪い狂気を感じた。
「そんなの、お前にはどうでもいいだろ」
「俺とアンタをこうした原因のクソ女となんで一緒にいるのかって聞いてんだよ!!!!!」
カチリ
頭のなかから、そんな音が響いた気がした。
「あっ……
あ?あれ?」
クラリと視界が回る。
ダメだ と心の中で何かが警鐘を鳴らしていて。
「優しい自分っていいよなぁ、
自分の事好きでいられるだろ?」
開けてはいけない箱があったことに、気づかされてしまった。
「でもそれって、結局偽善だよな。
辛い目あっても嫌な思いしてもぜぇんぶオレに押し付けるだけだ!!」
……ダメだ。ダメだダメだ。コイツの話を聞くな。
「思い出せよ。
そのクソ女のせいで、お前がどうなったか。」




