フュエール監獄
手前で野宿し、翌日朝から監獄に行くことになった。
フェイいわく、リリーがいることでまず入り口は開けてもらえるだろうということだった。
……のだが。
「うーん、これ、どこから入るの?」
「呼び鈴も…ないな。」
目の前に現れたのは真っ黒の鉄格子の入り口。
鉄格子は中央だけで、その他は同じく真っ黒な、そびえ立つような鉄の壁に阻まれている。
「すいませーん!だれかいませんかー!」
「ちょ…リリー!!」
リリーの大声にも反応はない。
「参ったなぁ…。」
ここで立ち往生するわけにはいかないがどうしたらいいのか…。
ガチャン ガチャガチャ
「とりあえず開きましたから、中にいきましょー!」
気がついたら、リリーはあっという間に鉄格子の鍵を開けてしまっていた。
さすが鍵師の娘。
「リリーちゃん…、意外とアクティブなのね…。」
---------------
「ザイラス、おかしいと思わないか?」
フェイがそう言ったのは建物のドアに手をかけた時だった。
「静かすぎる。
ここ、本当に人がいるのか…?」
フェイの言っていることは、入ったときから俺も気になっていたことだ。
鉄でできた建物なのに音が一切響いてこないのだ。
「お邪魔しまーす!だれかいませんかー!」
リリーはやはり難なく鍵を開け、やはり黒い鉄のドアをあける。
ドアをあけて途中、奥にあるものが見えた。
ぞぞっと背を伝う悪寒。
俺はすぐにドアを凄い勢いで閉め、ドアの前に立つ。
「どうした、ザイラス。」
不思議そうな顔のシルヴィとリリー。
「ここから先は…見ない方がいい。」
少し開けただけで気づいた。
血の臭いと、腐臭。
見えたおびただしい数の死体。
一体何が起きてるんだ!?
「いってぇ…」
さっきの光景を見た衝撃からか、頭に鋭い痛みが走る。
「ザイラス、どうした?!どこか痛いのか?!」
駆け寄るシルヴィが俺の頭に手を当てると、不思議と痛みは収まった。
俺は努めて冷静に状況を話すようにする。
「中にたくさんの死体が見えた。
よくは見えなかったけど死体がみんな同じ服を着ていたから、多分収監されていた犯罪者だ」
「ええっ!!!」
驚いたのはリリーだ。
顔はひどく青く血の気が引いている。
「うっ…嘘ぉ! お父さん!!お父さんは?!!」
「リリー落ち着け、ここ以外にまだ他にも棟がある!」
シルヴィが泣き出したリリーの背をさすって慰める。
正直この静けさは異常だ。
他の棟も…期待はできない。
だけどそれを言うのは酷すぎて、フェイも俺も黙ることしかできなかった。
「よし、じゃあ探すぞ!
ザイラス!!!」
「ん?」
すくりと杖を持ち、立ち上がるシルヴィが俺を呼ぶ。
「私には向かないところだから、手助けして」
「ん?」
ぐいぐいと、俺の手をとって、シルヴィはさっきのおぞましい黒い鉄の扉をためらいなく開けた。




