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盗賊は聖女に愛される  作者: ton
2章
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逃走

他の客に紛れるように、宿を出たのは朝方だった。


「ありがとうございました~!」


ガラゴロと、大きな荷物を引きながらたくさんの宿泊客が宿を出る。

この村には学校があるため、帰省前後のこの時期は迎えの馬車や保護者が多い。




「納 得 い か な い !!」




「あ~、これはしょうがないっていうか…

一番見つかっちゃまずいんだから、しょうがないだろ」



俺は身長的に子供を迎えに来た父親の役。

ラフな男性服に付けひげに帽子という、すこし中年を意識した格好をしている。


さっきからぶすくれているシルヴィは、女の子だとばれやすいということで、息子の変装。


少年のような格好でシャツにズボンにサスペンダーに眼鏡。

長い髪はハンチング帽にまとめて入れて、光の魔法でブルーグレーの髪色に変化させていた。

さながら少年探偵のようだ。


「うふふ、ここは我慢我慢♪」


髪はアップした茶色い髪のカツラ。

オレンジ色の女性用ドレスを着て、目立つ肩幅はパフスリーブの上着でごまかしているのは母親役のフェイだ。


「そっちをわたしがやりたかったのにっ!!」

「おほほ、身長的に無理だからここは許してちょうだいね」



なんだか様になりすぎてて嫌だ…。



宿を出た俺達は、村の端で馬を買う。

監獄へはここからちょうど馬で一日だ。

馬にフェイとシルヴィを乗せ、俺が馬を引きながら村の西の出口に向かう。


「誰かに見られてる感じ、するか?」

「いや、大丈夫かな。このまま抜けよう。」





出口を抜け、およそ一時間後。


「はあああぁ~!そろそろいいだろ!」

「多分な。お疲れさん。」


変装を解いて、元の姿にもどる。

髪色だけは黒だと普通にまずいので、シルヴィに村にいたときと同じ魔法はかけてもらったままだが。


「歩きながらになるが、マリーンちゃんがくれたサンドイッチがあるぜ。食べるだろ?」


そろそろ昼になる。行儀は悪いが追手が来るかもしれないと思えば仕方ない。

フェイとシルヴィも馬を降りて、サンドイッチを頬張りながら街道を歩いた。


「これだとザイラスにあーんができない…。」

不満気に呟くシルヴィ。


今日は変装の件もあって朝から不機嫌だったからな…。

ちょっと可哀想だったか。


「じゃあ今日は俺から。」

冗談半分で俺の持っていたサンドイッチをシルヴィに向けると、シルヴィははじめキョトンとしてたけれど、そのあと嬉しそうに笑ってパクっと食べた。



「ん!おいしい!」





その笑顔が破壊的で。


な…なんだこれ…。

なんだか胸がギュンってしたんですけど!!!




「なんなんだこのバカップル…。」






食事も終わりかけた、そんな時だった。






ギュオオオオオオオオ…





周りに響き渡る鳴き声。


「な…なんだ!魔獣の鳴き声か?!」


そろそろ山際にもなる。狼の魔獣がでてもおかしくない。

俺達は剣を構えた。


…しかし聞こえてきたのは。





「お…お恵みを…」



ギュオオオオオオオオ





その音は、街道に倒れていた女の子から聞こえてきていたのだった。


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