準備は入念に
「頼まれたものですけど、ここに置いておきますねぇ!」
「助かる!マリーンちゃんありがとう!」
「うふふっ♪お礼はデートでいいですぅ♪」
「あ…あはははは…。じゃあ都合がいい日に誘いにいくよ。」
ひらひらと手を振るフェイには生気がない。
「一体何をする気なんだ??」
シルヴィと俺はマリーンさんが持ってきた箱をがさごそと漁った。
「服…?」
中から出てきたのはたくさんの服。
子供物から大人まで、男女様々な服がある。
「宿の忘れもので持主が分からない、いらないものを持ってきてもらったんだ。」
フェイも服を一緒にがさごそと探り始める。
「ザイラス!これ!これ着てみたいぞ!」
テンション高めにシルヴィが箱から取り出したのは、真紅のスラリとした妖艶なドレス。
「ザイラスはこういう大人な女性はどうだ?」
ワクワクとした瞳で俺を見つめてくるシルヴィ。
な…なんて答えろと…。
「ええっと…
シルヴィにはこっちかな?」
俺は苦し紛れに薄水色のドレスを箱から掴んで引き出し、シルヴィに見せた。
するとシルヴィの頬はぽぽぽっと真っ赤に染まる。
「ひゅー!ザイラスくんだいたーん!!」
「へ?」
よくよくみたら薄水色の…スケスケなネグリジェで。
「ザイラスがこれが似合うっていうなら、着る!!!」
むんずとシルヴィはスケスケネグリジェを掴みとる。
「うわぁ~!間違い間違い!!
こっちこっち!!!」
俺は淡いパール色のこんどこそスケスケではないドレスを取り出して渡した。
…心なしか、シルヴィが少し残念そうな顔をしているんだが。
見なかったことにしよう。
「で?これで何をするんだ?」
「よく考えてみろ。さっき狙われて、俺達はすぐにこの宿屋に避難した。
ということは、さっきの狙っていたやつかそうでないかは分からないが、シルヴィちゃんには絶対追手がついてるし、ここにいることもバレてる。」
「…まぁ、だろうな。」
「だから、まずは変装してここを早いうちに逃げ出す」
フェイは円卓に置いた地図の上をすすっと指でなぞった。
「通常逃げるなら北上してこの山合にある小さな寂れた村か、反対に人に紛れるために南のちょっと大きな人の多いこの街に向かう。
これだとすぐバレるか、最悪あっちにも別の追手がかかっている可能性がある。」
どちらにしても八方塞がりだ。
「そうすると…ほかにはこの辺街も村もないだろう?
どこに行くんだ?」
「ここ」
フェイが指差したのは、確かに村でも街でもなかった。
「…フュエール監獄…。」
フュエール監獄は切り立った崖の上にある、恩赦すら許されない、大きな罪を背負った者が収監されている。
死を待つだけの極悪人だけがいる監獄だ。
「この監獄を抜ければルシア大陸の端だ。
この先にある島は聖女信仰ではなく、海の神を信仰してる。
そこまでいけばそうそう神殿が絡んでくることはないと思う。
ただ…、この監獄の回りはとてもシルヴィちゃんを連れて登れそうな立地ではないから、正面から突っ切るしかないんだよな。」
「でも抜けても船がないだろう?崖からどうやって島まで行くんだ?」
「船は…あるんだよ。
ザイラス、罪人はどうやって監獄に連れてこられると思う?」
「えっと…馬車とか?」
「近場ならな。でもだいたいそんな大きな罪を犯すのは都市部の悪党か政治犯だ。
一番大きなルーベンダールで罪を犯した場合、監獄まで馬車で半月。
犯罪者にその間の食事や世話までして監獄に連れてく意味があるか?しかも殺人をしたような奴等だぞ。
…ただし、だ。
反対にこの大きな川から一度海に出て、監獄を目指せば3~4日で着く。」
フェイはニヤリと、またあの企んだような笑みを浮かべた。
「えーっと……
あんまり言いたくないんだけど、その船を使うって…。」
「まぁ、勝手に拝借しに行くわけだし。
監獄破りみたいなもんだろうな。」
デスヨネー!




