刺客
「俺達、やっぱりよく見ると黒髪に見えるのかな。」
「いやぁ、ぜんっぜん分からんって。」
さっき回収してきた折れた矢を真ん中に置きながら3人で円卓会議だ。やっぱり俺達が魔族と勘違いされて狙われた線が強いけど…。
「しかもこの矢…、睡眠薬が塗ってある。えげつないな…。」
「お前が言うなよ。」
フェイと押し問答していると、気がつけばシルヴィが矢を手に持ってまじまじと見ていた。
「あ~、すまない。
これ、きっとわたしを狙ったやつだ。」
「「はぁ?!」」
二人でシルヴィの顔を覗きこむ。
「ええっと~…、
それは私の過去に起因するんだが…
わたしは、とある町の貧乏な家に生まれたんだ。
親は良くしてくれたが、6つを迎える頃には両親ともに流行り病で相次いで病死した。
身寄りのないわたしは孤児院に預けられたが、そこがまぁ、引き取った子を裏で売買する悪徳孤児院でな。
わたしは自分でいうのもなんだが、ほら見た目はそれなりだろう。
だから貴族の慰みものとして売られたんだ。」
「ああ、だから逃げだしたんだろう?」
「ええっと~、それには続きがあってな。
そのぉ~、まぁ、そのあと私に魔法の才があることがバレ……
いやいや、才を見つけてくれた人がいてな。
そこで暫くお世話になってたんだ。」
「そいつらも、シルヴィを利用しようとしていたのか?」
「いやぁ、そうでもないんだけど、まぁ、なんてゆーか、かなりめんどくさ…、いやいや、魔力があることを知られて、もてはやされてしまった。」
良かった。
ちゃんと良くしてくれる人がいたんだな。
「そうなのか…。
でも良くしてくれてた人達なら、まさか魔族を探しに行くとしてもせめて書き置きくらいはしてきたんだろう?」
「…………してきたぞっ!!!」
「「嘘つけ!!!」」
俺とフェイの言葉が思い切りカブった。
間が長いわ!!!
「で?狙ってきたのはシルヴィちゃんを連れ帰そうと思ってきた刺客なわけね。シルヴィちゃんの魔力考えたらそりゃ正面から対峙するより眠らせて連れ戻そうと思うかもな。」
「で、だれが連れていこうとしてるんだ?俺達も知ってるか?」
そう聞くと、シルヴィの視線がフヨフヨと宙を浮いた。
「えーっと……
ルーベンダールの、大神殿。」
「「……。」」
「シルヴィちゃん、短い付き合いだったな!」
「なんだっ!!見捨てるのかぁ!」
この国の中心地、ルーベンダールの大神殿。
バカでも知ってる、この世界の神…聖女を奉る、一番大きな神殿だ。
そして…それはつまり、魔族を一番嫌うという所でもある。
この間俺達を襲ったのは、特にその神殿に傾倒した過激派の者たちだ。
力で俺達を押さえつけ、滅ぼそうとしている。
「…ザイラス、わたしのこと、嫌いになったか…??」
見つめるシルヴィは震える手で俺の腕を掴み、不安そうな目をしていた。
「…そんなことないよ。ちょっとびっくりしたけど。
シルヴィは?優しくしてもらったんだろう?
帰りたくないのか?」
そうと聞いてはみたものの。
もし帰りたいと言われたら、俺は…。
しかし、ぎゅっと俺の腕を掴むシルヴィは、それでもきっぱりと顔を向けて言った。
「わたしはザイラスと一緒にいる。
離れたくない。一緒にずっといたい。
……もう、二度と……。」
小さくひっそりと呟くような声。
「ん?何?」
「……いや、何でもない。」
「ふぅ~…、
そーなると俺も帰るわけにはいかねぇかなぁ。」
「え?」
「大神殿が狙ってんだろ?
ザイラスのことバレてみろ。即、磔、死刑確定だ。
幼馴染をそんな目に合わせるなんて夢見がわりぃ」
「フェイ…。」
何となくほっとした。
いてくれるなら、やっぱり心強い。
「でも俺らは一応人間だし。大神殿の司祭だって悪人じゃないだろう?神に仕える身なんだから。
シルヴィを介してしっかり話し合いすればどうにかならないか?」
思い付いたことを提案してみたつもりだったんだけど。
「「それは無理。」」
「…なんで??」
フェイとシルヴィは目を合わせると。
はぁ と、息を吐いた。
…俺、なんか変なこと言ったか??




