新たな世界
そよそよと顔をくすぐる風を感じて目が覚めた。
見慣れない天井。
明るい陽が窓から優しく降り注ぎ、穏やかな空気が流れている。
外からは楽しそうな子供の笑い声がした。
ここはどこだろうと、身体を起こしてベットの隣にある姿見で自分の姿を見てみると。
「…本当に生まれ変わってる……!」
見た目は変わらない青年のままだが、俺の髪は深みを帯びた濃紺に。
目は少し明るめの紫色になっていた。
生まれ変わるならてっきり赤ん坊からだと思ってたけど…。
まあそのままでもこれなら全然問題ない!
「おぅ!目が覚めたみたいだな。」
開かれたドアの先には、髪が深みのあるオリーブグリーン、瞳が蜂蜜色になったフェイが立っていた。
「フェイ…!お前とは結構悪縁だったんだな…。
まさか生まれ変わってまで会うなんて…!!」
ちょっとじーんときてしまった。
死ぬ間際まで一緒にいて、しかも同じように生まれ変わるなんて。幼馴染でいても、いつも俺に損くじ引かせてきたコイツだけど、この縁は大事にしなきゃいけないんだなぁ。うんうん。
「なにいってんだおまえ。変な顔して。
頭どっか打ってるか?」
訝しげな顔をするフェイの後ろから、なにやらドタドタと階段をかけ上ってくる音が聞こえる。
「ザイラス!!!起きたか!!!」
「っうわ!!」
気がつくと、シルヴィが俺の胸に勢いよくダイブしていた。
「よかったあぁ~!いつ目が覚めるか待ってたんだぞ!」
目をキラキラさせて俺に抱きつき、笑顔で見上げる。
ちょっ…ちょっと!!
腕に柔らかいのが当たってんだけど!!
…ていうかその前になんでいるんだ?!!
混乱しながら、違和感を感じて頭をフル回転する。
そしてなんだか変な違和感の理由にすぐ思い至った。
「あれ?……シルヴィは見た目そのまま生まれ変わってる?」
俺の言葉に、フェイとシルヴィは、一度目を合わせると大きく笑い始めた。
「あ~!もしかしてお前、見た目変わってるから生まれ変わったと思ったのか?
ちがうちがう。これはシルヴィちゃんの魔法だよ。」
そう言うと、フェイは自分の髪をついっと持ち上げた。
「へ?」
「どこかで休ませるにも今までの見た目だと村に入れてくれないだろう?
だから人が勘違いを起こすように魔法をかけた!」
えっへんと偉そうに腕を組んで胸を張るシルヴィ。
「魔法を使って髪と瞳に光を纏わせて、光の屈折で色を加えたんだ。ザイラスには青、こいつには黄緑」
「へぇ~!!」
なるほど。すごい!
魔法ってそういうこともできるのか。
…ってことは生まれ変わってないんだな。
なんだかちょっと残念なような…。
「ザイラス、腹へってるなら飯持ってくるけどどうする?」
「あ、じゃあ頼む」
フェイは階段を降りると、パンとスープ、茶をすぐに持ってきてサイドテーブルに置いてくれた。
「とりあえずしばらくはここで身体を休めてからにしようと思ってるから、無理しないでゆっくりしておけよ。」
「わかった。」
飯を食おうとスプーンをスープにいれると、
「じゃあザイラス あ~ん♪」
スプーンを奪い取ったシルヴィが俺にあーん攻撃をしてくる。
…んん?
ええと…これはどうすれば…。
冷や汗をかきながら救いを求めてフェイを見ると、フェイはなぜかひきつり笑いをして、
「見るな見るな。俺はまた死にたくない、命が惜しい。」
そういって手で顔を隠す。
…何いってんだ? こいつ。
とりあえず好意を断りきれずに甘えてあーん攻撃を受け止めると、シルヴィは嬉しそうにへへっと微笑んだ。
…あ~。。
まずいなぁ。
これは流されてしまうかもしれない。
元々人から好意を寄せられること自体、ほぼ無いに近い俺だぞ。
普通の人よりそういったものに弱い自覚はある。
かわいい女の子に免疫なんてないし。
「美味しいか?もっと食べるか?」
フェイはいつの間にか部屋からでていってしまったのか、姿が見えなくなってしまっていた。
「…いただきます。」
俺は二口目を頂くべく、口を開けた。
顔が赤くなってしまってたのは、シルヴィにはバレてしまっていたと思う…。




