揃い踏み
シルヴィは事も無げにザイラスに駆け寄った。
ザイラスはシルヴィちゃんを見た途端、そちらをむいて呆けている。
何が起きたんだ?
「ザイラス。辛かったろう。
これからは私がずっとそばにいてやるからな。」
そう言うと、シルヴィちゃんはザイラスに抱きつき、首に腕を回してザイラスの背を撫でた。
それを聞いたザイラスは、なんだか幸せそうにふふっと笑って。
うなだれたようにカクリと気絶。
気がつけば黒い翼も消えていた。
なんだあれ!なんだあれ!
猛獣使いなの?!シルヴィちゃん!!
愛しそうにザイラスの背をなで続けるシルヴィちゃん。
まるでそこだけ浄化された聖域に迷いこんだようで、なんだかちょっと涙がでそうになったのはザイラスには秘密だ。
「今ならにげられるぞ、紫の魔法師」
そんな聖域から、チラリと魔法師を見やる視線。
冷ややかな菫色の瞳は、今まで見てきたシルヴィちゃんとは大違いで…背筋が凍った。
「優しいザイラスに暗黒魔法まで使わせるなんて、本当は生かしておくのも腹立たしいんだが。
この先ザイラス達を狙わないなら許してやるぞ。」
「……なぁに、その上から目線。
今時の若者には言葉遣いから教えなきゃならないのかしら。
その子さえ起きてなければ負ける気はしないわよっ!!」
パチパチと、魔法師の手にまた雷の魔法が生成されていく。
あ~せっかく落ち着いたのに!
なんで煽ったんですかねぇシルヴィちゃんはぁ~!!!!!
「……だからバカは嫌いなんだ。」
魔法師が投げつけた雷の魔法は、勢いよくシルヴィにまっすぐ向かっていく。
その勢いは凄まじく速く、もう避けることはできない…!!
見たくない現状に瞳を閉じた、その刹那。
バシン!!!!
え……?
「は……?!」
「邪魔するな。」
…え~と。
気のせいでなければ…
今持っている手の杖で、力業ではねのけましたね……?
魔法つかうやつそれ!バットじゃないから!!
その攻撃が怒りのツボをついたのか、シルヴィちゃんは気絶したザイラスを横たえると、ゆらりと立ち上がった。
「言うことが聞けないみたいだな。
わたしはザイラスのように優しくはないんだ。
……地獄で反省してきたらいい。」
目の前に杖を掴んで横にしたシルヴィちゃんの瞳に。
一瞬ちらりと舞ったのは炎だったか。
≪目覚めよ≫
ドガァァァッッ!!!!!!
シルヴィちゃんが一言唱えると。
魔法師めがけて足元の土がまるで針山のように隆起する。
「ッガァアアァアァ!!!!!」
魔法師はその針山に身体を貫かれ、吐血すると。
…そのままピクリともしなくなった。
死んだ……のか???
よく隆起した土地を見れば。
「なんだこれ……樹の根???」
その樹の根はおよそ根っことは言えないくらいに輝いていて。
まるで生き物のようにうねうねと動いている。
こいつが動き出したから、足元の土が隆起したのか。
「珍しいか?
…ああ、見たことなかったか。さすがに光魔法は。」
光魔法?
にしては随分邪悪な使い方…。じゃなくて。
あれ?それどっかで聞きましたよ。
さっき思い出した文献に確か載っていたような…。
「聖女のあたししか使えない魔法だからな!」
ニヤリと毒をもった笑顔で微笑んだ。
聖女?
シルヴィちゃんが??
あれ…ということは。
もしかして…。
思い至って、冷や汗が出た。
それって、もしかしてもしかしなくても。
ここに伝承の魔王と聖女が揃ってるっていうことですねーーーーっ!!!!
次から新章です。




