教祖様の部屋の前
「なんだか、気になるわね」
学習会(この日は、教祖様ご臨席の下での奇跡の力を鍛える練習)が終わり、アメリアを伴って廊下に出たわたしは、ふと漏らした。
「気になりますか? そうですよね、やっぱり。え~っと、それは、一体?」
と、アメリア。言葉に出すなら、少しは考えてからにしてほしいものだ。
それはともかく、わたしは、コーブ事務局長とともに去りゆく教祖様に目をやり、
「教祖様は、普段、この教団本部でどのようにされているのでしょう?」
「『どのように』ですか? それは、教祖様ですから、教祖様らしく、え~っと……、それはやはり、教祖様による、教祖様の一日なんですよ、きっと」
アメリアはなぜだか、誇らしげに胸を張って言った。でも、「教祖様、教祖様」と連呼しているだけなので、その意味するところは、さっぱり分からない。アメリアも教祖様の人物像を把握していないことは、明らかだろう。
ただ、そういうことなら……
「これから教祖様の部屋に行ってみましょう。一度顔をつきあわせて話し合ってみなければ、相手がどういう人物なのか、分からないわ」
「教祖様の部屋にですか!? それは、え~っと、いかがなものかと……」
アメリアは、両方の手のひらをわたしの前に突き出して、「ダメ」若しくは「無理」のポーズ。わたしも、教祖様への「お目通り」は、手続的に非常に面倒ということは承知している。でも、何も馬鹿正直に、正規のルートに乗っかってばかりいる必要はないだろう。
わたしは口をアメリアの耳元に近づけ、
「手続も何も…… とにかく、今すぐに、理屈抜きで教祖様の部屋に行くのよ」
「はいっ? え~っと、それは、一体、どういう意味ですか??」
「意味と言われても…… 読んで字のごとく」
わたしはアメリアの手を引き、早足で教祖様の部屋に向かった(なお、教祖様の部屋の位置はアメリアも把握しており、途中、廊下を行き交う教団信徒に経路を尋ねることもできるので、わたしが教団本部内で迷子になる心配はない)。教祖様に会う場合に許可が必要としても、部屋を間違えて入って、たまたまそこにいた教祖様と話し込んだというシチュエーションであれば、許可は無関係だろう。これは、もちろんわたしの理屈・言い分(世間的に通用するかどうかは別にして)。
そして、教祖様の部屋の前で、
「カトリーナさん、いくらなんでも、これは……」
アメリアは、蒼い顔をして言った。
でも、ここまで来て、今更やめるわけにはいかないだろう。わたしが教祖様の部屋のドアをノックしようとした、その時……
「何をそんな、聞き分けのないガキみたいなこと言ってるの!!!」
部屋の中から、甲高い女性の声が響いてきた。聞いた感じとしては、声の主はコーブ事務局次長。教祖様の部屋の中では、どういうことになっているのだろう。




