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Episode.66 王都への帰還

夜明け前の空を、銀の龍が駆け抜けていく。

広がる雲海の上、黄金の陽が地平線を照らし始めた。

龍の背には、アルト、リナ、セシリア、クロード、ツバキの五人。

ヴォルガフォートでの死闘を終えた彼らは、

王都――グランディアへと急いでいた。


「……なんか久しぶりだな、王都グランディア」


アルトが遠くを見やると、雲の切れ間に巨大な城と都市が姿を現した。

白亜の城壁と金の尖塔。

太陽の光を反射し、まるで天空の都のように輝いている。

リナが微笑む。


「懐かしい……セシリア、帰ってきたね」


セシリアは胸に手を当て、静かに頷いた。


「ええ……ようやく。父上もも、母上も、みんなも

 無事でいてくれればいいけれど」


クロードが腕を組み、風を見ながら口を開く。


「アーティファクトが完成すれば、刻印の魔物たちも消える。だが――」


視線が鋭くなる。


「まだ終わっちゃいねぇ。

 ヴァルゼスが言ってた“魔神の器”、あれが本当なら……この先は地獄だ」


ツバキが苦笑する。


「それでも、やるしかない。止めるって決めたからな」


アルトは小さく拳を握り、前を見据えた。


「そうだ。俺たちで……この世界を守るんだ」


龍が低く鳴き、速度を上げる。

朝日を裂くようにして、王都グランディアの上空を旋回した。


王都グランディア ―王城—


龍が王城の中庭に降り立つと、騎士団が一斉に武器を構えた。

しかしセシリアが姿を現すと、驚きと歓声が広がった。


「……セシリア殿下!? 本当に……!」


玉座の間。

王は重厚な金の王冠を戴き、年老いた眼に深い安堵を浮かべた。


「セシリア……よくぞ戻った。我が娘よ」


セシリアは膝をつき、静かに頭を下げた。


「ご心配をおかけしました、父上。

 ……けれど、まだ終わってはいません」


王は頷き、アルトたちを見渡す。


「諸君の働き、聞き及んでいる。

 今こそ、アーティファクトを完成させる時だ――!」


王宮の祭壇 ―光の儀式—


城の最奥、古代から伝わる「創世の祭壇」。

円形の台座の中央に、アーティファクトの器が置かれている。

アルトたちは、それぞれの素材を掲げた。


「蒼光の宝玉」

「世界樹の葉」

「紅蓮の宝石」

「翠玉の翡翠」

「そして……龍姫の血」


光が重なり合い、渦を巻く。

白金の光柱が天を突き抜け、城全体を包み込む。


「これが……アーティファクトの完成形……!」


セシリアが息を呑む。

光は空へと溢れ出し、まるで世界全土に広がっていくようだった。

遠くの山々、砂の国の荒野、古代都市アルバの廃墟、

東の国の桜霞まで――

その光が届いた瞬間、各地の刻印の魔物が苦しむように叫び、

闇の中に溶けて消えていった。


「やった……!」


「これで……世界が救われたのね!」


歓喜の声が広がる。

だが、その中で――

クロードだけは表情を曇らせていた。


「……来るぞ」


その瞬間、空気が凍りついた。

祭壇の上に黒い影が現れ、闇の風が吹き荒れる。

黒いドレスに身を包み、長い金髪をなびかせる女――エルシア。


「ようやく完成したのね……“器”が」


「アーティファクトが……器……?」


その声は甘く、しかし底知れぬ冷気を孕んでいた。


「お前……ヴァルゼスの仲間か」


クロードが剣を構える。

エルシアは微笑んだ。


「仲間? いいえ。私たちはただの礎。

 ――“魔神の復活”は、もう止められない。

 アーティファクトによって刻印の魔物は消滅したわ。

 そして魂の残滓を回収した刻印は――」


祭壇の光が一瞬にして暗転する。

空が震え、大地が呻く。

エルシアは空を指差す。


「見なさい……真の絶望を」


エルシアの瞳が紅く輝き、闇の亀裂が天へと伸びる。

その奥で、巨大な“何か”が蠢いていた。

アルトが息を呑む。


「まさか……もう、復活が……!」


エルシアは微笑を深めた。


「さぁ、終わりの始まりよ」


闇が弾け、彼女の姿が消える。

残されたのは、震える大地と、光を失ったアーティファクトだけ。

クロードが低く呟いた。


「アーティファクトは刻印の魔物の消滅と同時に

 魔神復活の道具だったってことか……」


アルトは拳を握りしめ、仲間たちを見回す。


「終わらせよう……この手で。次こそ――」


闇に包まれた王都の空を、稲光が裂いた。

世界の運命を賭けた“最終の戦い”が、いま始まろうとしていた。

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