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Episode.51 王都での再会

飛空挺は帝都の港を離れると、ゆっくりと宙に浮かび上がった。

船体に刻まれた魔導石が光を放ち、重力を振り払うようにして高度を上げていく。

甲板に立つ人々が歓声をあげる中、アルトとリナも思わず息を呑んだ。


「すごい……本当に、空を飛んでる」


リナが目を輝かせ、風に揺れる髪を押さえる。

アルトは手すりに手をかけ、広がる景色を見渡した。

眼下には帝都の黒い城壁、遠くには青く光る海、

そしてはるか彼方には山脈が霞んでいる。

歩いてきた道のりを一望するかのような景色に、胸が大きく打たれる。


「俺たちは……これまで随分と旅してきた気がしてた。

 でも、こうして空から見ると、ほんの一部にすぎないんだな」


空は果てなく広く、地平線の向こうにさらに未知の世界が広がっている。

アルトはその事実に圧倒されつつも、不思議と恐れはなかった。

むしろ、胸の奥からわき上がるのは高揚感だった。


「これからもっと大きな冒険が待ってる。

 そう思うと、楽しみで仕方ない」


風に吹かれながら呟くアルトの脳裏に、故郷リーヴァ村の光景が蘇った。

緑に囲まれた小さな村。畑を耕す人々の笑顔。

リナと共に木剣を振っていた日々。

あの場所から始まった夢が、今こうして空の彼方へと繋がっている。


「アルト?」


隣に立つリナが覗き込む。


「なんでもない。ただ……故郷のことを思い出してた」


リナは優しく微笑み、同じ景色を見上げた。


「きっと、村のみんなも応援してるよ」


空の旅は穏やかだった。

船上では旅人たちが歌を口ずさみ、子どもたちが駆け回る。

そこには陸の旅とは違う、空のゆったりとした時間が流れていた。


やがて――。 

遠くに巨大な城と白亜の街並みが見え始めた。

王都グランディア。

栄華の象徴と呼ばれる都。


「着いたな……」


アルトは深く息を吸い込み、胸に熱を宿した。


「さぁ、冒険に行こう」


飛空挺は光を浴びながら王都の港へと降下していく。

飛空挺が降り立った瞬間、アルトとリナは思わず足を止めた。


「……すごいな、王都グランディア……」


目の前に広がるのは、圧倒的な規模の街並み。

白亜の城壁は山のようにそびえ、

そこから広がる大通りには無数の人々が行き交っていた。

石畳は磨き上げられ、整然とした建物が軒を連ね、

露店からは異国の香辛料や甘い菓子の匂いが漂う。

アルトは故郷のリーヴァ村を思い出し、その差に言葉を失った。


「アルト……あたし、目が回りそう」


リナが興奮したように目を輝かせる。


「だな……これが世界の中心か」


二人は街並みに見とれつつも、目的の場所へと足を運んだ。

王都の冒険者ギルド。

その建物は、まるで宮殿のような豪奢さを誇っていた。


扉をくぐると、すぐに喧噪が耳に飛び込んでくる。

広大なホールの中には数百の冒険者が集まり、

依頼を受けたり、酒を酌み交わしたりしている。

ヴェルサスのギルドとは比べ物にならない熱気に、アルトもリナも圧倒された。


「すまない、クロードという冒険者を探しているのだが」


受付に声をかけると、女性受付嬢がにこやかに答えた。


「クロード様でしたら、

 ただいま応接室におられます。ご案内いたしますね」


案内された応接室の扉を開けた瞬間、懐かしい声が響いた。


「――ようやく来たか、アルト、リナ」


そこにいたのは、変わらぬ落ち着きと威圧感を纏うクロードだった。

アルトは胸の奥が熱くなるのを感じる。

かつてアステルで憧れた背中が、再び目の前にある。


「クロード!」


「お前たちがここまで来るとはな。大したものだ」


軽く言葉を交わしたあと、クロードは真剣な眼差しで切り出した。


「刻印の魔物について、話しておかねばならん」


だが、アルトが先に口を開いた。


「帝国で……俺たちはすでに刻印の魔物と戦った。

 帝国騎士団と共に」


クロードの目が細められ、やがて小さく笑みを浮かべる。


「そうか……話が早い。なら状況を理解しているな」


クロードの説明は深刻だった。

刻印の魔物は各地で猛威を振るい、冒険者や騎士団が対処に追われている。

しかし根本的な解決には至らず、時間を稼ぐしかない状態だという。


「刻印を無力化するには、元凶となっている魔族を討つか、

 アーティファクトを用いるしかない」


クロードは低く告げた。


「だが魔族が何者かは不明。となれば、

 お前たちにはアーティファクトを探してもらいたい」


アルトとリナは頷き合う。


「そのアーティファクト……どこにあるんだ?」


「かつては王宮に収められていたが、今は所在不明だ」


クロードは視線を鋭くし、続けた。


「まずは王に謁見する。

 古い記録や伝承から、手がかりが得られるはずだ」


リナが小さく息を呑む。王に、謁見――。

それは、冒険者にとって夢物語のような機会だった。

アルトは拳を握りしめる。


「わかった。俺たちで必ず見つけ出す」


こうして二人は、ついに王宮の扉を叩くことになるのだった。

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