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Episode.15 魔纏解放

エルフの里の奥深く、長老に案内された階段を下りていくと、

青白い光が淡く灯る地下空間にたどり着いた。

そこには無数の古文書や魔導書が積み上げられ、

まるで知識そのものが呼吸しているかのような

重厚な雰囲気が広がっていた。

ミリアは思わず息を飲む。


「ここが......魔法書庫......」


リリシアは震えながらも

きょろきょろと辺りを見回している。


「なんか空気が重いな......」


ライガは肩をすくめた。

長老は頷き、ゆっくりと口を開いた。


「よいか、お主ら。

 魔装というのは自らの魔法属性を身体や武器に纏わせる技......。

 この世界では上位の技とされておる」


ミリアは真剣に耳を傾ける。


「だが魔装には......もう一段階、上がある」


ミリアの目が一気に見開かれる。

続けて長老は棚から古びた巻物を取り出した。


「まず、魔法には属性とは別に“特性”というものが存在する」


長老は巻物を開きながら語る。


「火属性には“燃焼”と“爆発”

 水属性には“氷結”と“奔流”

 風属性には“切断”と“飛翔”

 土属性には“堅牢”と“創造”

 雷属性には“麻痺”と“破壊”

 闇属性には“封印”と“隠蔽”

 そして――」


長老はミリアを指さす。


「光属性には“強化”と“特攻”じゃ」


ミリアは息を呑む。


「ひ、光って案外ぱっとしないんですねぇ......」


とリリシアが首を傾げる。

長老は満足げに説明を続ける。


「そう思うじゃろう?じゃが、光属性は勇者の家系が持つ特別な属性。

 とんでもなく強い属性であることは間違いない。

 ミリアよ…お主の父親、確か光属性であったな。

 お主の先祖には......おそらく勇者がいたのじゃろう」


ミリアは静かに頷く。


「そして光は自己強化において突出しておる。

 極めれば、常識では測れぬほど強くなれる」


ライガが目をまん丸にする。


「つまり......ミリアって、

 まだまだ強くなる余地があるってことか?」


「もちろんだとも」


長老はゆっくり頷いた。


「属性を纏わせるのが今までの“魔装”」


長老は指先から風属性の魔力を放ち、魔力を手に纏わせて見せる。


「だが特性を理解し、それを意識して身体や武器に纏わせた魔装を解放した時――」


長老の周囲の空間が震えた。

まるで空気そのものが圧力を帯びる。


「その力は魔装を遥かに凌駕する。

 それが“魔纏開放(まてんかいほう)”じゃ」


ミリアは金縛りにあったように固まる。

ライガは思わずよろける。


「え、え、空気が重いですぅぅ......!」


とリリシアは泣きそうだ。

長老は魔力を解き、いつもの穏やかな表情に戻った。


「...ただし身体への負荷も魔力の消費も大きい。

 自らの魔力を解放するわけじゃからな…。諸刃の剣とも言えよう。

 ワシは今となっては数秒が限界じゃな...。

 普段は魔装を使い、いざという時に魔纏開放(まてんかいほう)を使うべきじゃ」


ミリアは拳を握りしめる。


「それを使えれば......ザンガとも......!」


「すげぇ......オレもできるのか?」


とライガは興奮気味に聞き、


「お主も適性があればいずれは」


と長老は曖昧に答える。

リリシアはおそるおそる挙手し、


「わ、私は身体が弱いので、

 負荷とか......し、死んじゃいませんか......?」


「死ぬかも」


長老は即答した。


「ひぃぃぃいい!!」


リリシアが派手に転んだ。


「ほっほっほ、冗談じゃ。そもそもそんなに簡単にできはせぬ。

 さて......それより最後に見せたいものがある」


長老は最奥にしまわれていた、特別な封印が施された書物を取り出した。

古びているのに、どこか神聖さを感じる一冊。

それをゆっくりと開いた瞬間―― 空間が震え、

魔法書庫全体に光が広がり、まるでシアターのように映像が浮かび上がった。


「ひゃあっ!?」


リリシアは驚いてミリアに抱きつく。


「これは大賢者が残した記録じゃ」


映し出されていたのは――巨大な黒い影と戦う一人の人物。

その周囲には、属性を纏った輝き、さらにもう一段階上の力――


「大賢者は“魔纏開放(まてんかいほう)”、そして“究極魔術(アルカナ・アーツ)”を使い、

 過去にザンガを封印したのじゃ」


ミリアは息を呑む。

ライガは拳を握り、リリシアは震えながらも目をそらさない。


「これが真実......よく見ておくがよい」


長老の声を合図に、三人は大賢者の戦いの映像を凝視する。

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