閑話.1
サーニャ・ミストレインは膨れている。
それもこれも昨夜、彼女自慢の母であるオリアナが唐突に「二人でカラドヴェル辺境伯領領都ミズガルに修行に出なさい。」と告げたためである。
行きたくないなぁ、と家の前の広場で素振りをしながら思うサーニャであった。
どうせならママも一緒に来ればいいのに。
シーヤの面倒を一人で見るの大変なんだから!
シーヤもシーヤよ! もっといつもみたいに屁理屈捏ねてゴネなさいよ!
矛先を隣で居合の型を確かめるようにゆっくりと真剣を抜く弟へ向けた。
が、すぐにその難癖にも似た八つ当たりは消え去る。
可愛い弟。双子だけど絶対私がお姉ちゃん! だって見えないシーヤをいつも面倒見てるもん! 剣だって私の方が強いわ! 口喧嘩は負けるけど、喧嘩なら負けないんだから!
けど、と思う。
最近はシーヤも力をつけ、変だ変だと言っていた逆手居合抜きが様になり、たまに負けている。
昨日もオリアナがおじさんと話している間、5本中2本負けたことを思い出す。
2本とも初手、開始直後の抜刀に合わせきれなかった。
速いのだ。
抜き身の立ち合いでも、速さで懐に入られて何もできずに負けることもある。
家の弟は可愛いだけじゃなく強いのだ。
ムカつく! けど嬉しい! が綯交ぜで微妙な表情になるサーニャ。
そんなサーニャの様子を察してか、シーヤが声をかける。
「サーニャ、どうしたの? トイレ? 我慢せずに行ってきなよ」
ズレてる上にデリカシーの欠片もない可愛いくない弟である。
「お姉ちゃん、ね。トイレじゃないわよ。……シーヤは、その、領都? 行くの嫌じゃないの?」
「嫌だけど、母様の期待に応えたい……かな? よくわかんないや」
「ふーん。刀、持っていくの?」
「うん、もうこっちの方が慣れた」
「前から思ってたんだけど、なんで刀がいいの? なんで居合?」
「あれ? 言わなかったっけ? 見えないからだよ」
「それ逆手の理由でしょ?」
「あー、そうだった。何でだろう? 母様の話聞いた時に何かピン! と来たんだよね。これだ! って」
「変なの。ねぇ、試合しよ!」
本人が分からないなら自分に分かるわけない、と早々に思考を放棄するサーニャであった。
「えー……」
と言いながらも胡坐を解き、玄関脇に立てかけていた木刀を取りに行く。
戻ってきて胡坐の姿勢から腰を浮かせ、木刀の柄に軽く手を添えたシーヤが声をかける。
「いつでもいいよ」
サーニャは上段に構え、一足で間合いに入る。まだシーヤは反応してない。
取った! と感じ木剣を振り下ろしかけた時、シーヤの木刀の切っ先が顎先に触れていた。
ムカつく!!
ごきげんよう。ゆずゆです。
ご高覧いただき誠にありがとうございます。
これにて一章終了です。
と言うわけで、閑話、と言う名の言い訳回でした。
ここまでご覧いただいた方の中にはこの小説の主人公誰だ?主人公視点少なすぎない?と思われた方も多くいらっしゃったと思います。
思考が定まらない子どもだと文章に起こすとこう言うもんだと思いますので、まあ率直に言いますと書きづらいってことですね。
主人公シーヤ視点だともう少し変わるのですが、盲目で物語始めた阿呆のせいですね。
はい、私です。
ともあれ、これからもご照覧いただければ幸いです。




