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EP.6

「やーだーー! ママと離れたくないー! どこにも行かないー! ここがいいー! ここにいるー!」


 サーニャが大声でびえんと大泣きしてしまった。

 しまったな、とオリアナは思う。この子らの気持ちも聞かずに勝手に決めてしまった、と。

 シーヤも話を聞くまではソファに座っていたのに、今はオリアナが掛けているソファまで歩み寄り、肘掛けに置いた腕の裾をちょこんと握っていた。


 「ママは僕らがいらなくなったの?」


 銀眼から大粒の涙を溢れさせながら不安げに私の方へ顔を上げ、嗚咽を懸命に堪えるその姿に胸を締め付けられた。


「何を馬鹿な事言ってるの。そんな訳ないでしょ。ほらサーニャもそんなところで泣いてないでこっちきなさい」


 大声で泣きながらも寄ってくる。

 二人を抱きしめながらゆっくりあやす様に言葉をかける。


 「サーニャもシーヤも大事で大好きな私の子よ。いらないなんて考えたことすらないわ」


 オリアナに二人の高い体温が伝わる。

 それを逃すまいと二人を抱く腕に力を込める。


「じゃあ今から断ってよ、ママ」


 シーヤの言葉にオリアナは首を振る。

 泣いてるこの子らを外に預ける事を考えると胸が張り裂けそうだ。断腸の思いだ。

 きっと私の今の心境が体に現れていたら剣天とは思われない程ズタズタに引き裂かれている無様を晒しているだろう、とオリアナは思う。


「断らない。私はね、あなたたちが凄く大事。とても大事。だからあなたたちにはもっと大きくなってもらいたいの。もっと強くなってもらいたい。もっと賢くなってもらいたい。もっと優しい人になってもらいたい」


 二人の白く柔らかい髪に頬擦りをしながら我が子に言い含める様に語る。


「あなたたちはとてもとても凄い子よ。これはお母さんのわがままだけど、この想いは本当よ」


 オリアナにしがみつく二人は何も言わず母の言葉を聞いていた。分かっているのだ。愛されている事くらい。

 分別がつかないわけじゃない。どうしても不安なのだ。愛する母と離れる事が。母が側に居ない事が。


 オリアナも二人の思いや不安を感じている。しかしだからこそ必要だとも考える。

 いつか二人は世界に飛び立つべきなのだ。

 私がそうした様に。

 世界を知り、人を知り、強さを知る。

 そしてその果てを目指すべきなのだ。

 良い機会だとは思う。

 人は何かなければ今の停滞を選びがちだ。

 この子らが停滞してるとは思わないが、今私のせいで私以外を知らないことは後々大きな楔となるやも知れない。

 母としてそんな事はあってはならないのだ。

 だから背中を押す。


「だから泣かないで私の大好きな子どもたち。お母さんは何があろうともあなたたちを愛するわ」


 三人の泣き声だけが響く木組の家を満月が照らすのだった。

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