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EP.11

 アリステア・カラドヴェル・エリンは不機嫌だった。

 それもこれも2日前に唐突に訪れた白い双子のせいに他ならない。


 1日目、それはそれは酷かった。

 貴族の矜持を以って名乗りを拒否すれば、聞いたこともない流麗な言葉で、それでも言外に滲む確かな悪意に心を挫かれた。


 自分の部屋に逃げ帰って布団に包まり涙した。

 自分より少し年上の田舎者の忌子に馬鹿にされて悔しかった。


 母であるセレスティアに諭された。

 曰く、かの伝説の剣天とその御子である、と。

 曰く、人を見た目で判断するとは何事か、と。

 曰く、出会いは悪かったが二人は友だちになりたがっていた、と。


 知らない! と思った。

 そんな大事なこと先に言ってよ! とも思った。


 2日目、演習場が騒がしかった。

 いつもと違う、熱狂に踊らされているような、そんな喧騒だった。


 暇そうに歩いていたローガンを捕まえてその日の演習について質した。

 曰く、二人の前にただの兵では物の数ではない、と。

 曰く、聖級剣士よりなお精強、と。

 曰く、二人の強さに自分含めた皆が感化された、と。


 悔しい! と思った。

 産まれたその時から貴族としての責任を負い、努力を続けた自分でもまだ人を動かせないのに。

 剣一つで人を魅せた二人がずるい、とも思った。


 そして今日である。


「人の一日の食事量を2kgと仮定した場合、兵5,000の10日分の兵量を運ぶ荷馬車は何台必要か。荷馬車の積載量は800kgとする」


 と言う講師の問いに対し、盲目でメモを取ることもできないシーヤが手を挙げ、


「125台です」


 と即答してしまった。


 講師のモルガン先生は少し怯みながらも「正解ですが……」と返し、シーヤが手を下げる。

 その淡々とした様子に横目で睨むことを抑えきれなかった。


 自分の紙には途中までの計算式が書かれているが、答えまではたどり着けなかった。


(なんでこの二人がいるのよ……!)


 一般基礎教養学・算術の授業。

 それが始まる前に突然双子を伴ったヘルマンが教室として使っている部屋へやってきた。


 どうやら剣天様の頼みで双子にも授業を受けさせてほしいとの事だった。

 事前に聞いていたのかモルガン先生は快く二人を受け入れた。


(普通私に伺いを立てるのが筋じゃないの?)


 と、思わずにはいられなかったが、これは好機、と捉えることにした。

 武一辺倒の森育ち、何する者ぞ! と意気込んだ矢先の出来事である。


 「先生、シーヤさんの試算は算術であれば正解だとは思いますが、軍隊に付随する輜重隊、後方支援部隊が計算されていないかと思います。通例に倣えば同数の支援部隊が随行すると想定されるため250が妥当と考えます。」


「そうですね。アリステア様の回答が軍として正解です。勿論、シーヤさんの回答も計算として正解です。」


 計算スピードでは負けたが、こと領地に関わる事には負けてはいられない。と鼻息を荒げる。


「アリステアちゃんすごいね! ねぇねぇ、しちょー隊? てなーに?」


 と、サーニャが声をかけてきた。


「ちゃん!? 馴れ馴れしいです! せめてお嬢様とお呼びなさい!」


「えー、いいじゃんいいじゃん。それで?」


「良くありません! ……輜重隊とは食料や戦争に使う物を兵に随行して前線に運ぶ部隊です……」


「おー! 物知り! 可愛いだけじゃなくて頭もいいんだね!」


 真っ白なことを除けば見目の良いサーニャにべた褒めされて顔を赤くするアリステア。


(嫌じゃないけど、モヤモヤする……いや、やっぱり嫌だ!)


 その様子をモルガンは微笑ましく見ながら授業を再開するのであった。

ごきげんよう。ゆずゆです。

ご高覧いただき誠にありがとうございます。


アリステア視点で明かされる驚愕の真実。

辺境伯、自分の子どもに巫山戯たサプライズを企ててました。

ある程度無礼を許される相手なので対応力とか胆力を見ようかと思ったらあの様でした。

辺境伯が悪いと思います。


ちなみにものすごく影の薄いルーカス君は入室時点で辺境伯が下座に座って先に自分達に名乗りを促し、母親も真っ先に名乗ったことで「やばい相手だ!」と気づき挨拶しました。その後は地蔵でした。

影が薄いだけでとても優秀です。


引き続きお楽しみいただければ幸いです。

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