お風呂でハプニング
お琴の稽古が終わって、もう夕方になった。そして美月さんの上達には驚いた。最初は全然出来ていなかったのに、今はそつなくひけている。お琴ってそう簡単に上達するものなのかな?
褒めても「賀奈子さんの教え方が上手なんですよ」としか返ってこないので、あきらめた。
もしも美月さんをゲームに参戦させていたら、ヒロインなんてそっちのけで皆を夢中にさせていただろう。それくらい美月さんのスキルには驚かされる。
特別能力はまだ分かってないらしいけど。
「皆様、ご夕食までまだ時間がかかるらしいですから、お風呂に入るのはいかがですか?」
お風呂。パジャマの用意持ってこないと。
(男女別よね?)
「あ、皆様安心してください。男女別ですわ」
(よかったー)
悠仁とのあれこれを心配しているわけではないけど、年頃の中学生が一緒にお風呂って言うのは…。それに実質三十路が三人混じってるし余計に。
私は椿の間に戻って用意を取りに行った。
コンコン
襖が軽くノックされた。誰だろうか。悠仁ではないことは確かだ。
「玲花さん、ご用意は出来ましたか?」
賀奈子さんだ。私を呼びに来てくれたのだろうか。やっぱり友人ってすごくいい。玲花として生まれ変われてよかった。いや、やっぱり良くない。身長が伸びない。
「出来たから今いくわ」
襖をガラッと開けると賀奈子さんの隣に美月さんもいた。
「玲花さん、お風呂、露天風呂もあるらしいですよ?」
にこにこ笑顔で美月さんが言ってきた。これはすごくわくわくしているな。瞳が輝いている。やっぱり知らないものだらけではしゃいでいるんだろうな。
大人びているとはいえ彼女は本当に12歳なんだから。まだ誕生日が来ていないらしい。
あー、若いっていいな。
(この発言では私が年寄りみたいね)
精神年齢が三十路以上って事を考えるとそう簡単にははしゃぐことも出来ない。今さら私が年相応のことをしたら気持ち悪いだけだわ。
「さぁさぁ、早く行きましょう!」
美月さんが今日はやけにハイテンションだな。楽しそうで何よりです。
「ええ、そうね」
「では、参りましょうか」
◇◆◇
驚くことにここには男風呂と女風呂で分けられていた。お金持ち怖い。
脱衣場で服を次々と脱いでいく。ネックレスは、おいておこう。タオルで体を隠しながら二人を待った。
「やっぱり玲花さんのお胸は大きいのですね」
賀奈子さんがまじまじと言う。そんなに見られると恥ずかしい。美月さん、手をわきわきしないで。
「……D…いや、Eはありますね…」
美月さんは手をわきわきしながら言った。やっぱり今日の美月さんはいつもと違うな。いや、これが本来の美月さんなのかもしれない。体を洗い、髪を結んだらお風呂に入ろう。
ちゃぽん
「ふぅ……」
「揉んでいいですか?」
「いやよ」
「だって、私は貧乳ですし…羨ましいんですもん」
美月さんはしょぼんとした。美月さんには美月さんの良いところがあるんだから、そんなこと気にしなくたっていいのに。
「玲花さんって肌すごい白いですわね」
「美月さんには負けるわ…あれ、美月さんは?」
気づいたときには遅かった。私の両胸には美月さんのほっそりとした手があった。
「なんでこんなに大きいんですかぁーーー!」
「あっ!ちょっとやめっー!」
美月さんが暴走してしまった。なにか逆鱗に触れることがあったのだろうか。だとしたらあやまらないと。
「玲花さん!とりあえず露天風呂に!!」
賀奈子さんは非力な美月さんを捕まえて私を逃がしてくれた。
(露天風呂は…ここね)
「わぁ、凄い。景色が見える」
賀奈子さんの別荘に来てよかった。友達もいるし。
「はぁ、碧はのぼせたって言うし。せっかく露天風呂があるのに」
(こっ、この声は……)
悠仁?!
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