お琴が趣味
悠仁の言葉が私の心に重くのし掛かったまま、皆のもとに戻った。そしたらまだ勉強会は続いていて、美月さんが分かりやすく説明していた。
勉強が出来ると言うのは本当らしい。高校生になって美月さんが学園に入学したら、一位の座が危ないかもしれない。
「あ、玲花さん、戻ってきたんですね」
美月さんが私に気づき、くるっと振り返った。
「ええ、もう終わる頃だろうと思って」
「ちょっと、玲花チャン待ってよ」
悠仁は置いてきたのにすごいスピードで追いついてきてビビってしまう。
「嫌よ」
「仲割れですの?」
「いや~玲花チャンは恥ずかしがりやさんだからなぁ」
「そんなものよ」
「ちょっと玲花チャン?!」
よかったいつもの調子に戻ってる。さっきは悠仁もおかしかったから不安だったんだ。
「ふふっ、仲がいいんですね」
美月さんにまで笑われてしまった。仲いいわけではないんだけど、悪いわけでも無い気がする……もしかして私、絆されてしまっているのだろうか。
(悔しい)
「勉強会はおしまいにして、お昼ご飯を頂きましょう」
賀奈子さんナイスアイデア!座布団に座るとき、わざわざ悠仁が先に座ってから隣になら無いように座った。
なのに悠仁は移動して隣に座ってきた。それは反則だと思う。
私は若干不機嫌になりながらも豪華な和食を頂いた。
とても美味しかった。
「これから何をします?お琴とか、日本舞踊とか、三味線とか、華道に茶道……あ、剣道もいいですわね」
(わー、ジャパニーズお稽古)
どれもやったことがない。でも、楽しそうだ。私はピアノとか社交ダンスとか、語学の勉強とか、ちなみにフランス、英語を習った。テーブルマナー、フラワーアレンジメント……。
語学は楽勝だったし、社交ダンスもまだギリギリいける。ピアノはまぁまぁ出来るし、テーブルマナーは完璧。唯一無理だったのがフラワーアレンジメントだ。あれは少しやってあまりの酷さにやめらさせられた。
「先生は?」
「全て私ですわ」
どれも賀奈子さんも完璧に出来そうな感じだが、剣道が引っ掛かる。あんなすらりとして華奢な賀奈子さんに剣道が出来るのだろうか。
そう考えていると、賀奈子さんが私に耳打ちで
「剣道は前世で習っていたのですわ」
と言っていた。それなら納得だ。
「私はお琴にひかれました」
美月さんが目を輝かせながら賀奈子さんに言った。普段そんな目を輝かせるなんてことはしないから新鮮だった。可愛いけども。
「俺は剣道がしてみたいかな」
「僕も」
なんか皆が言っている流れなので、焦った私は
「……華道以外なら」
と変な回答をしてしまった。
「ご経験があるのですか?」
と賀奈子さんに聞かれたので何となく笑っておいた。
「玲花チャンと関わってるとどんどん弱点が分かってきちゃうね。俺が敵だったらボロ負けだ」
何を言っているのか分からなかったけど、悠仁の弱点なんか知らないからとりあえずお腹に一発ぶちこんだ。
「理不尽!!」
「では、本日はお琴にして、明日剣道をいたしましょう?」
「やった」
「いぇーい」
ゆるっと決まった。よし、頑張ろう!お琴とかやったことがないけど、賀奈子さんは自己紹介の趣味で言うくらいだから、凄い腕前なんだろう。
琴の間と言う部屋に移動すると、賀奈子さんがお琴を披露してくれた。多分あれは賀奈子さんのマイ琴なんだろうな。
「では、参ります」
それからの賀奈子さんはまるで人が変わったかのように繊細で、かつ綺麗な音色、そして時には早く、時には遅く。私の語彙力では伝えられそうにないが、賀奈子さんのお琴は趣味の粋を越えていた。
私は直感で感じた。これ、無理なやつだと。
「皆様のお琴も用意したのでお使いください」
お琴をひき終わった賀奈子さんが笑顔で言った。
私は、悠仁に言われたことなどすっかり頭の中から消えていた。
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