表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

35/47

過去5 晴樹編



大和くんと出会ってから、7年がたった。今日は大和くんの入学式だ。あんなに小さかったのに、大きくなって…。


「父さん、…さっきから感動に浸ってばかりで動いてないよ。通行人の邪魔になるだろうから退いてあげた方がいいよ」


呆れ顔で僕に言ってきたこの少年こそ大和くんなのだ。最初のころの呼び名が『晴樹さん』から『父さん』にかわったしね。


「そうだね、そのとおりだ」


僕は穏やかに笑った。


「じゃあ、行こっか」


もう手を繋ぐことは大和くんが恥ずかしがるからなくなってしまったけど、僕達は肩を並べて、会場まで向かった。


「あれ、○○○ゲームスの社長とそのご子息じゃない?」


「わっ、本当だわ。大和様がこの学校に通うのかしら」


「私達ラッキーね」


大和くんの活躍が凄いから、大和くんはもうすっかり有名になってしまって、どこを行くにも女子がキャーキャーだ。

まぁ、大和くんはかっこいいからね。


「父さん、女性の方が沢山見えるんだけど…」


そして、女子にキャーキャーされてきた結果…大和くんは女性恐怖症になってしまった。仲がいい人なら女性でも構わないんだけど、それ以外はダメダメ。


大和くんにこの学校の間違ったパンフレット渡しちゃってたか。ここは去年まで金持ちの子息ばかりが通う男子校だったのだ。


でも今年から共学に変わって、金持ちの子息たちとつながりをもちたい中級会社の人達(それ以外もいるけど)が、娘を通わせたことによって、男子よりも若干女子の方が多い。


「あー…、いってなかったけ。ここ、共学になったの」


「うそおおお!」


大和くんの絶叫が、会場内に響き渡った。我に帰った大和くんは、思いっきり頬を赤らめていて、可愛かった。


「父さん男子校って言ってたでしょ」


「ごめんね、今年から共学になったんだよ」


「ああぁ…僕の人生終わった」


大和くん、撃沈。


「とりあえず、…頑張って」


「………」


◇◇◇


現在12歳の僕は、父さんの手違いで男子校ではなく共学の中学に入学してしまった。父さんはちょっと抜けてるところがあるから、たまにしでかす。

僕の人生は終わったも同然だ。


困ったときは…


京子さんに会いに行こう。いつも何か困ったことがあれば、京子さんに会いに行って、話をしているうちになんだか安心するんだよね。


…京子さんに会ってみたいなぁ…。


あの父さんをここまで惚れさせる京子さんは、一体何者なんだろう。今もあの部屋は、誰もいないけど綺麗に掃除してあって、本当に京子さんが住んでいるかのようだ。


父さんは結婚していないけど、手についている指輪は、京子さんとのものなんだろう。


父さんの手伝いが出来るようにもっと早く勉強を進めて、もっと沢山の知識を身につけないといけない。

早く父さんを楽にしてあげたいのだ。


僕に沢山の幸せをくれたのは、紛れもない父さんだから。僕はもらってばっかりで、なにも返せていないから、父さんに返せるようになりたいんだ。


そう色々と考えているうちに、京子さんのお墓についた。

あれ?花が変わっている。

今日僕よりも先に父さんが京子さんのところに行ったのかな。

僕も花を持ってきちゃったんだけどな…。


「京子さん、僕は中学生になったよ。見てくれていますか?今日は父さんも来たのかな。沢山の花で溢れていて、とても綺麗です。恥ずかしながら僕には女性が苦手で、男子校に通いたかったのですが、父さんの手違いで共学に入学してしまいました。これから、僕は上手くやっていけるでしょうか」


…返事は来ない。まあ、それは当たり前なんだけど。


「少し心が軽くなったので行きますね。今日は父さんがご馳走を用意してくれているみたいなので」


立ち去るとき、京子さんに頑張って、と言われた気がした。



◇◇◇


大和くんが帰ってこない。京子のところにでも行っているのだろうか。僕達親子の考え方は日に日に似ていくもので、困ったことがあれば京子に会いに行くと言う習性を持つ。


さっき僕も行ったんだけどな。今頃お墓が花一杯になっているだろう。京子も喜んでいることだろう。


「ただいま」


「お帰りなさい、ご馳走を用意しているよ。一緒に食べよう」


僕がそう言うと、大和くんはふっと笑って


「そうだね」


と言った。今日のご飯はいつもよりもっとおいしかった。


「ねぇ、大和くん」


「なに、父さん」


「僕と大和くんだけの男所帯だけど、大和くんは僕と暮らしていて、幸せだと思える?」


「…そんなの、今さらだよ」


その短い言葉が僕の心に響いて、生きていてよかったな、大和くんの父親になれてよかったなと心の底から思った。


「そっか…ならいいんだ」


「久しぶりに二人でお風呂にでも入るかい?」


僕が冗談混じりでそう言うと


「…たまにはね」


と大和くんは、にへっと笑った。


その日の夜は、京子の部屋で京子の素晴らしさを二人で語り、最終的に京子は女神だと言う結果に落ち着いた。


「…僕達、何してるんだろうね」


「それは僕が聞きたいよ」


「…寝よっか」


僕達は京子の部屋の床で、爆睡したのだった。



…………………………………………………


「おはよう父さん」


僕が朝食を作り終わった頃に、大和くんが起き上がってきた。


「いつもより遅めだね」


「そっちこそ」


僕達は夜の3時頃に寝たので、ほぼ四時間ほどしか寝ていない。おまけに床で眠ったからか、体の節々が痛い。


「いただきます」


朝食を食べ終わると、スーツに着替えて、仕事の準備を始めた。大和くんはもう制服に着替えていた。大和くんが制服を着ているのにまだなれなくて、違和感を覚えてしまう。

とても似合ってるんだけどね。


「じゃあ父さん、行ってきます」


「いってらっしゃい」


これからもこんな風に、だらだらといきていくんだろう。親子二人で。





これで晴樹編はおしまいです。本編に戻ります。もしかしたら番外編などで大和くんを出すかもです。感想あったら、伊戸菜に教えて下さい。お読みいただきありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ