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過去4 晴樹編


「吉川先生、それと皆。今までお世話になりました。これからは一ノ瀬大和として、幸せに暮らしていきます」


今日、大和くんが正式に僕の養子になった。もう戸籍も一ノ瀬になっている。今はお別れの挨拶をしている。


「たまに遊びに来るからねー!」


「絶対だよー!」


…………………………………………


家の鍵を開けて、ドアを開いた。


「ただいま帰りましたー」


僕は大和くんに目配せすると、大和くんも


「ただいま!」


と言った。これからは、僕一人じゃなくて、大和くんもいる。


「あ、一ノ瀬さん、…じゃなかった。晴樹さん!」


…すごく嬉しい。大和くんに晴樹と呼ばれるのは。


「なぁに?」


僕がそう聞くと、大和くんは少しもじもじとしながら、


「京子さんに挨拶しに行きたいんだけど…ダメかな?」


「うん、いいよ。行こうか」


この前京子の話を大和くんにしてから、大和くんが京子さんに会いたいと何回も言ってきて、「また今度ね」と僕が言ってから、大和くんは京子に会える日を楽しみにしていたのだ。まぁ、会うと言ってもお墓だけど。


僕達は家から歩いて、京子のお墓に向かった。


「大和くん、僕がゲーム会社の社長だってことは知ってるよね?」


「うん、知ってるよ」


「大和くんにはその会社の次期跡取りになってほしくて、あと、家族がほしくて、養子にしたんだ。…次期跡取りは嫌だよね」


僕は大和くんを跡取りにするためと家族がほしいと言う理由だけで養子にした。大和くんのことは大好きだし、後悔はしていないけど、大和くんに言うのを忘れていた。

いきなりこんなことを言われたら嫌だと思うけど、黙って嫌われたら嫌だから、早めにいっておいた。


「ううん、全然。むしろ晴樹さんの息子になれてよかったと思っているし、次期社長も夢だから嬉しいよ!」


あー、なんて出来た息子なんだ。僕は幸せものだ。神様が寄越してくださった天の使いなのかもしれない。そんないかれた発想まで出てきてしまうほど大和くんは素敵だ。そう思っていたら、大和くんはにやっと笑って


「晴樹さん一人だと泣いちゃうもんね」


と言ってきた。…僕は5歳の息子に早々弱味を握られてしまった。


「大和さん、それは言わないお約束と言うやつですよ」


「ふふっ」


こんな何気ない会話をすることでさえも、幸せを感じられるから、…一人じゃないっていいなって思う。


「着いたよ」


「ここが京子さんのお墓?」


「うん、そうだよ」


僕がそう言うと、大和くんは一礼して、


「京子さん、初めまして。僕の名前は一ノ瀬大和です」


京子に挨拶をした。


「僕は京子さんに会うことが叶わなかったけど、僕は晴樹さんに養子として迎えられたの。晴樹さんはとっても優しい人で、京子さんのことがとても好きらしいよ。京子さんは幸せものだね。これからは僕と晴樹さんと二人で楽しく暮らしていくから、安心してね」


と続けた。どうしてこんなに大和くんは素晴らしいんだろう。きっと優しい子に育つだろう。


「京子、大和くんが言ったとおりだよ。これからも頑張るね。…また来るよ。…大和くん、手に持ってる花を置いてあげて」


「分かったよ」


大和くんは抱えている花束を京子のお墓に丁寧に置いた。


「じゃあ、帰ろうか」


「うん、そうだね」


帰る途中、大和くんが手を差し出してきて、何かな、と思ったら手を繋ぐ合図だった。

僕は笑顔で手を握り返し、帰り道は二人で手を繋ぎながら帰った。今度こそ、この手の温もりは守り抜くと、心のなかで誓った。







お読みいただきありがとうございました。

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