過去2 晴樹編
児童養護施設に着くと、「一ノ瀬さんですか?」と聞かれた。
「はい」と返事をすると「ついてきてください」と言われた。言われるがままについていくと、相談室のような場所に着いた。
「お入りください」
中に入ると、施設の人と、5歳くらいの男の子がいた。
「初めまして、一ノ瀬晴樹です」
僕が挨拶すると、男の子が
「は、初めまして。滝沢大和です」
と元気に挨拶してくれた。
「大和くん、この人が前に大和くんを養子にしたいって言っていた一ノ瀬さんだよ」
「僕を養子にしたいと言ってくれて、ありがとうございます!これからよろしくお願いします」
大きな瞳でキラキラと見つめられると、どうしたらいいのか分からなくなってくる。けど、悪い印象は無いみたいでよかった。
「はははっ…大和くん、気が早いよ。僕が大和くんの里親として認められないといけないからね」
「えーと…よくわからないけど、頑張ってください」
…5歳くらいの男の子に応援された。
「ありがとう」
笑顔でお礼をしておいた。
…………………………………………………
「えっ、一ノ瀬さんはあのゲームの社長さんなの!すごい!かっこいい。僕もなれるかな」
「うーん、頑張ったらなれると思うよ」
僕達は今、まずはお互いを知るところからと言うことで二人で話をしている。さっきまで大和くんの話を聞いていたけど、僕の話が聞きたいと大和くんが言ったから、今は、僕の話をしている。
「そっか!…なら、僕大きくなったら社長になるよ!」
腕を突き上げて力強く言っている大和くんを見ていると、なんだか微笑ましくなってくる。大和くんと話していると、不安だった気持ちもなくなって、優しい気持ちになれた。
子どもって本当にすごいと思う。
「じゃあ、…期待してるね」
僕は大和くんの頭を軽く撫でて言った。
「もう遅い時間だし、僕は帰ろうかな」
「っえ!一ノ瀬さん帰っちゃうの?」
そんなことを言ってもらえるとは思っていなかったから、嬉しくなった。
「また、会いに来るね」
今日の面会は、これで終わり、次来る日程を施設の人と話してから車に乗って帰った。
◇◇◇
今日は祝日。僕の会社も休みにしてある。そして、今日は大和くんに会いに行く日だ。大和くんに会うと、疲れもふっとんでいくから不思議だ。今回で会うのは4回目かな。
最近は毎日下を向いてばかりの日々だった気がするから、大和くんとの出会いは、僕にとっていい結果になったのかもしれない。
「一ノ瀬さん、こんにちは!」
会って早々大和くんが僕に抱き着いてきた。可愛い…。
「こんにちは、大和くん。元気にしていたかい?」
「うん!いいこだったよ」
「大和くん、一ノ瀬さんが来る日をずっと楽しみにしていて、あ、大和くん、一ノ瀬さんに渡したいものがあったんだよね。渡さなくていいのかな?」
施設の人がそう言った。ずっと楽しみにしてくれていたのか…。う、嬉しすぎる。
最近癒しが足りて無さすぎてもう、大和くんの存在が天使のように思えてくる。
「こ、これ。どうぞ」
大和くんがもじもじしながら僕に渡したのは、四葉のクローバーのしおりだった。
「これね、僕が見つけたの。一ノ瀬さんが幸せになるようにって」
…感激過ぎて涙が出そうだ。いや、もう半泣きだ。
「あ、ありがとう!一生大切にするよ!」
「ふふん!どういたしまして」
大和くんが得意気に言った。
「あ、そうだ。僕も大和くんと施設の皆に貰って欲しいものがあるんだ」
「え?何々~」
大和くんがわくわくした様子で僕に聞いてきた。
「これ。うちの会社が出した新しいゲームなんだけど、よかったら皆で使ってほしいんだ。力作なんだよ」
どんなプレゼントにしようかと悩んだのだが、結局僕の会社のゲームにした。皆の分も渡せば大和くんも困らないだろうし。施設の人も子ども達が遊ぶ遊具がなくて困っていると言っていたし。
「うわぁ、すごい!ありがとう一ノ瀬さん」
「一ノ瀬さん、わざわざ施設のために、ありがとうございます」
施設の人にもお礼を言われたので、なんだか僕はかしこまってしまった。
「いえいえ、僕がしたかっただけなので…お礼なんて」
「じゃあ一ノ瀬さん!このゲームで皆と遊ぼう」
…………………………………………
「いけいけっ」
「頑張れー、大和くん」
「一ノ瀬さん弱ーい」
今僕は施設の皆とゲームをしている。僕はゲームが苦手だったらしく、解説なら出来るのに、いざ実践となると全く使い物にならかった。
「また僕の勝ち!」
まぁ、皆の笑顔が見れたらそれでいいか。
ぽっかりと空いた心の穴が、少しずつ、塞がっていく。
ああ、幸せだな。
「一ノ瀬さん、今日はありがとう」
「こちらこそありがとうね。また、会いに来るよ」
「あっ、その事なんだけどね、吉川先生が僕に一ノ瀬さんのおうちに泊まりで行ってみたらって言ってくれてね。…泊まりに行っていいかな」
お、お泊まり。ついにここまで来てしまった。どうしよう、心の準備が…。
「じゃ、じゃあ、次会うときは皆と遊んだ帰りに僕の家に泊まりに来ればいいよ」
そう言うと、大和くんは僕にぎゅっと抱きついて、
「楽しみにしてるね。一ノ瀬さん」
そう言ってにっこりと笑った。大和くんは素直で優しくて、僕なんかにはもったいなさすぎる子だ。
里親になるからには今よりももっと幸せにしてあげなければ。小さな幸せもたくさん重なれば大きな幸せになるって言うしね。
僕は車を走らせた。
お読みいただきありがとうございました。




