なんだか悲しくなってきた
最後悠仁視点になります。
私の視線の先には、パンを加えて走っていく人達。お分かりだろうか。後少しで私の出番がやって来る。
賀奈子さん、私の番だけ棒を下げてもらうこと、言っておいてくれただろうか。
そして、言いたいことがある。
何で棒を持っている係の人が、悠仁なの?!
体育祭の5日前くらいの日に「何係にしようかな~」と言っていた悠仁に、「あまりものよ」と言ったばかりなのに。
何で、あまりものがパン食い競争の係なのよ!
私はアンラッキーガールか!
「位置について、よーい、ドンッ!」
(はやっ)
皆、一斉に飛び出した。どうして私が出番のときはガチ勢しかいないんだ。出遅れた私は必死に追いつこうと走った。
(もうパンを咥えているわ!)
追いつくことは無理だろう。もしも棒のところまで行ったとしても、高すぎて届かず、置いていかれるだけだ。それなら皆が行ってから棒を低くしてもらえばいい。
「はあっ…はぁ」
(遠い!)
なんでこんなにもスタートから棒までの距離が遠いんだ。幸人兄様や玲奈姉様の歓声がつらい。
棒のところまで行くと、そこには1つしか吊るされていないパンがあった。このパンは有名なところの美味しいパンだと言っていた。
私は棒を低くして貰うのを待った。………一向に下がらない。ちょっと、悠仁はどうしてニヤニヤと悪い顔をしているんだ。下げてよ。もう1人の係の人が困ってるって。私も困ってるって。
(こうなったら)
家で練習した成果を見せてやるわ!沢山練習したのに、一向に上達しなかったけどね。まぁ、こう言う時に限って成功するって言うパターンもあるから。
「ふんっ!」
(届かない…)
思い切りジャンプしたのに、全然届かない。さっきの言葉は撤回するわ。
悠仁はどうみても笑いを堪えるのに必死だし、横の人も哀れむような目で私を見てくるからいたたまれない。はやく終わらせなきゃいけない。
「ほっ!」
やっぱり無理だった。だからパン食い競争は嫌だったんだ。全ての元凶は真横にいる悠仁だ。眼鏡だって返してくれないし…思い出したらムカついてきたわ。後で思いっきり頭突きしてやる。
「頑張れー!」
「赤い髪の子頑張ってー!」
とうとう観客からも応援されてしまっている。もう、本当に恥ずかしいからやめてほしい。私は若干涙目になってきた。…と言うか、お願いだから棒を下げて!
「悠仁、棒を下げて!でないと一向に終わらないわ」
私が若干涙目で怒りながら言うと、悠仁はやれやれ、と言った感じで棒を下げてくれた。高さは推定150センチ。そして、私の身長141センチ。パン食い競争ってパンを咥えないといけないし、パンを手でつかんで持っていくのもずるい気がするし、何とか頑張って飛ぶことにした。
「ふんっ!ほっ!」
後少し…私いける!
幸人兄様と玲奈姉様が一眼レフを構えだした。というかもうとってるけど…。
歓声がどんどん大きくなっている。
「特別科1年Ⅱ組、琉川玲花さん!後少しでパン、ゲットなるかー!頑張れ、琉川さん!」
放送委員までもがノリにノリだした。本当、恥ずかしいを超えて、何だか悲しくなってくるわ。
「えぇい!」
(咥えた!)
私はやった。やっとパンをゲットした!今までで一番高く飛んだかもしれない。あくまで私の基準だけど。これが周りの人にとって高いと思うかは分からないけど。
やったーーー!もう一生パン食い競争には出ない!
「やりましたーー!」
周りからの歓声がワッと盛り上がった。…なんだか有名人になった気分だ。有名っちゃあ有名だけど兄様や姉様が凄すぎて本音を言うと私が小さすぎて、あまり知られていないのだ。勉強はできるのに。髪とか特徴的なのに…。
『ぐきっ』
(…ん?)
何だか足から不穏な音がしたのだけれど。気のせ…いや、足痛い足痛い!
思いっきり変な方向に足が曲がった。これは捻挫…骨折いったかもしれない。
「玲花?!」
悠仁やっぱキャラ違うよね。まるで…そう、晴樹のよう。…ああ、さすがにこれだけ飛んだら意識飛んじゃうよね。朝から体調悪かったし…。悠仁が晴樹のように見えてくるこれは、私が作り出した幻覚なのかもしれない。
だから、悠仁がチャラくないんだ。…納得納得。
そこで、私の意識がフェードアウトした。
…………………………
「本当、困った婚約者だなぁ…」
玲花がパン食い競争に必死になりすぎて足を曲げて、おまけに意識を飛ばしてしまった。
俺は玲花を優しく抱き締めると、お姫様抱っこして、保健室へと向かった。
今日の玲花は、俺のことを三回も腹パンしてきたし、竹馬に乗って転ぶし、足捻るし、…なんか可愛かったし…。玲花らしくないところが見られた体育祭だった。まだ俺の出る選抜リレーが残ってるけど。
しかもアンカーだし。
これで一位になったら玲花、喜んでくれるかな…いやいや、俺には大事な人が。
玲花から、なんだか懐かしい匂いがする。そう、まるで………ダメだ!無駄なことは考えずに、玲花を保健室に届けるとするか。俺は駆け足で保健室に向かった。
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