第6話「空を制圧する」
「ナ、ナセル、何か考えがあるのか──?!」
三角帽子を押さえながらバンメルがナセルを振り返る。
……考えぇぇぇ??
はっ! んなもんあるかッ!
「……出たとこ勝負だ────!!」
「な、なにぃぃぃいい?!?!」
バンメルが目をむいているが、知るか!
翼竜部隊のことを話さなかったお前の責任だろうが……!
「わざとじゃないわい!! ええぃ、くそぉ!」
半ばヤケクソ気味のバンメルだが、口調とは裏腹にその表情はどこが楽し気だ。
「バンメル! 速度をあわせろッ! ドラゴンの最高速度でも、輸送機なら十分についていける!」
「やかましい! 舌をかまんように口を閉じとれ!」
いくらドラゴンが空の覇者とはいえ、所詮は生物。
航空機の速度には遠く及ばないだろう。だが、ドイツ軍側も一機が損傷しているため、巡航速度は大きく落ちている。
もっとも、幸いなことに、損傷機の被害はエンジンが一発のみ。
これなら、たちまち墜落するようなことはないし、編隊飛行には支障もなさそうだった。
「密集! 密集! 襲撃に備えろッ!!」
グルグルと手を回して集合合図を出すナセル。
すると、銃座に人を排した輸送機10機は、まるで手を伸ばせば触れられそうなほど身を寄せていく。
……対する迎撃機は魔法兵団の航空兵力──翼竜部隊が約100機の大群だ!
──ギェェェエエエエ……!!
腐った肉を引き裂くような下品な獣声に、反射的にバンメルの肩を叩く!!
「……来るぞ!! 一旦、降下ポイントのことは忘れろ──!……まず敵を躱して生き残るのが先だ!!」
だから、行け!!
いけよ、バンメル!!
「ちぃぃい……爺使いの荒い小僧じゃ──!! ドラゴぉぉぉおン!!」
ナセルに言われるまでもなく、バンメルが強引な軌道でドラゴンの機首を曲げる。
翼竜部隊は真正面から進路を防ぐ部隊と、上空に遷移しつつナセル達を狙う部隊に分かれていた。
「数の利を生かそうってか? なら───」
……ならば、まずは敵を掻きまわす!!
「初弾装填──!!」
───|撃ちまくれぇぇぇえええええええええええええええ《ファオイア フラァァァァァァァァァアアイ》!!
10機の戦術輸送機と、一騎の巨大なドラゴンが見事な編隊飛行で大きく旋回っ!
そして、一撃しようと上空から降り落ちて来た翼竜の鼻先目掛けて防御火網をぶちかました!!
ダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッ!
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダッッ!
無数の火箭がきらめき、空を曳光弾が切り裂いていく!
──ドイツ軍の戦術輸送機:Ju52/3mは3発エンジンを装備した、どこかコミカルな外見をしているが、こうみえても軍用機。
武装は施されており、一機当たり3機の航空機関銃のMG15を備えている!
その防御火器が、合わせて10機編隊全部で計30丁! その機関銃群がハリネズミのようにして輸送機群を守っているのだ。
「撃てぇぇえ! 撃てぇぇぇええ!」
パッ!! と空中に血煙が立つ!
──ギェェェエエエエァアアア……?!
密集した輸送機からは雨あられと防御火器が指向され、なんとか一撃を決めんとしていた翼竜を叩き落としていく。
ギラギラと空を切り裂く曳光弾の光。7.92mm弾とはいえ、翼竜には防ぎきれないだろう。
「「「ぎゃぁぁぁあああああああ!!」」」
──ぶちゅ……!
一瞬だけ聞こえた竜騎手達の悲鳴。
彼等は成す術もなく防御火網に囚われ撃墜されていくと、絶叫が高空の空気ごしに木霊していった……。
「はーーーーはっはっはっは!!」
無防備な的だと思って襲い掛かったのだろう。
だから、まさか反撃されると思っていなかった不用意に突っ込んできた翼竜が数匹、あっという間に叩き落とされてしまった。
──どーんなもんだ!!
「おい、ナセル!! 前だ!! それくらいで浮かれておる場合か?!」
……だが、翼竜の主力はいまだ健在! しかも、その数は正面の太陽の中に潜む、進路を妨害中の数十匹だ!!
その上、更にさらにと、その数は増加中……。
「ちぃ!! あとからあとから──!」
だが、これが敵地で戦うということか──……!
(壁を作る気か?!)
まるで、分厚い壁のように立ち塞がる翼竜部隊。あそこに突っ込んでいっては流石にドイツ軍の輸送機と言えど無事ではいられない───。
「お、おい! あそこに、このままでは突っ込むぞ?! な、何とかなんか──?! なんとか、」
「はぁ?!」
なんとかってなんだよ、なんとかって!!
──ドイツ軍だって万能じゃねぇぇええ!!
「あれがあるだろうが!! ワシのドラゴンを叩き落とした──」
「あ゛ぁ゛ぁ゛?! あ、あれって……メッサーシュミットのことか?!───バカ言うな相対速度の差で間に合うものかよ……!」
……クソ! 簡単そうに言うんじゃねぇ!
なんとか出来たらとっくにやっている!!
「とりあえず、上空に遷移した翼竜は最悪無視してもいいが───」
戦術輸送機の速度なら振り切れるし、防御火網に阻まれて損害を増やしていくのみ。
「上はきにせんでもええ!! それよりも問題は真正面から通せんぼしている翼竜部隊じゃろうが──!! 旋回力じゃ奴らが上じゃ!……このままじゃ突っ込むぞ?!」
───どうするんじゃナセル?!
「わーってる!! 今考えてる!!」
……バンメルに言われるまでもなく、
奴らは、大きく旋回して迂回しようとするナセル達の鼻先を抑えようと、まるで蝙蝠の群れのようにわさわさと沸きいでる翼竜部隊を率いて常に進路を塞ごうとする動きを見せていた。
このままでは、あと数秒で連中の群れに輸送機ごと突っ込んでしまう……!!
そうなれば連中にも被害は出るだろうが、此方も無事では済まない。とくにJu52/3mの波型鋼板製の外板といえど、もたないだろう。
──いや、まてよ!?
「そうだ!……メッサーシュミットだ!!」
「あぁん?! 相対速度で間に合わんと言ったのはお主じゃろうが!!」
バーーーーーーカ!!
そりゃ、Bf109Gの話だ!!
進化したドイツ軍……Lv7召喚獣を舐めるな!!
「ドイツ軍に不可能はないッッ!!」
あと数秒で衝突するってんなら、その数秒でカタをつけてやるぁぁぁああ!!
……はぁぁぁぁああッ!!
胸の呪印に魔力を注ぐナセル……。
「……いでよ、ドイツ軍──────!!」
ブワッァァアアアアア……!
ナセルの魔力を受け取り、中空に浮かび上がった召喚魔法陣が4つ!!
空中で呼び出すのだからもちろん、航空機だ!!
それもただの航空機ではない────……そう、あと数秒の距離を一瞬で詰める高速の申し子……!!
「───行ぃぃぃぃっッッッけぇぇぇえええええええええええ!」
カッ───……!
Lv7召喚獣、
※ ※ ※
ドイツ軍
Lv7:メッサーシュミットMe262
スキル:音速飛行
機首30mm機関砲×4、
55mm空対空ロケット弾R4M×24
備 考:ドイツ軍のジェット戦闘機。
大戦末期に登場し、音速を超える高速性と、
大口径機関砲及び多数の空対空ロケット弾の重武装により、
連合軍機を恐慌状態に陥れた。
しかし、エンジン信頼性が低く、稼働率には最後まで悩まされた。
愛称のシュヴァルベとは「燕」の意味。
※ ※ ※
───ギィィィイイイイイイン!!
───ギィィィイイイイイイン!!
大量の魔力を吸って顕現したLv7召喚獣が狂おうしいまでの咆哮をあげる!
……そう。
『Jumo004B-1』ターボジェットエンジンの爆音を響かせてッ!




