第5話「空を制する」
『『『直上、敵機来襲──────!!!!』』』
一歩遅れてドイツ空軍中に響き渡る接敵警報!
その瞬間、バリバリバリと鋭い爪が輸送機の鋼板を切り裂く音が盛大に混じったかと思えば、激しい破壊に晒された、一騎の輸送機のエンジンから黒煙が吹きだし行き足がガクンと落ちる。
───ボンッ……!
「クソッッ……! 一機やられた?!」
『警報、警報ッ!!』
『『『|警報ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお《アラーーーーーーーーーーーーーーーーーート》!!』』』
ワンテンポ奥照れ、無線に響き渡る絶叫!!
途端に全輸送機の警報が鳴り響く────!!
ヴィー!!
ヴィー!!
けたたましい警報音が無線機ごしにも流れ、その瞬間に時を置かずして奴らが強襲を仕掛けて来た!!
そう。
……それは、狙っていたのか、たまたまか────だがいずれにしても、このタイミングで接敵するとはッ!
「く……。やられたか……! よりにもよって──ドラゴン!! よりにもよって太陽の中からだと?!」
教導機を務めるナセルの後尾に詰めていた一機が食われたらしい。
思わず振り返ると、輸送機の外板である波型コルゲートメタルが、ばっくりと切り裂かれて黒煙が噴き出していた。
左翼のエンジンもパスンパスンとせき込んで停止する。
「くそ!!」
せいぜい、地上の高台から魔法攻撃で対空射撃をしてくる程度だと高をくくっていたが、
ナセル達の魔力を遠方から察知し、律儀に緊急発進をかけた王国の虎の子の戦力がいたらしい────……!
しかも、ドラゴンだと?
空中機動戦力である飛竜や怪鳥は、全て、勇者が親衛隊に接収したものとばかり───……。
「ま、まてまて、ナセル違うぞ。あれが、ドラゴンなものか──。……あれは翼竜じゃて。ほれ、北部に生息する魔物どもじゃよ」
はっ?!
「よ、翼竜……?!」
翼竜───それは、ドラゴンの亜種ともいえるモンスターだった。
北部には特に多く生息し、性質はどう猛にして果敢。魔王軍でさえ手を焼いているという危険生物だ。
……実際は、竜と名がつくものの、鳥に近い種族で、ドラゴンとは似ても似つかないモンスターなのだが───。
「そんな話、初めて聞いたぞ?!」
「お、おうおう。すまんすまん。わ、忘れとったわい───……! ありゃー最近、配備されたばかりの新兵種じゃ。……た、確かー、調教師の訓練用に捕らえていたらしいのー」
バンメル曰く、野戦師団に協力するテイマーが、より高度な『飛竜』をテイムするための練習として、無数に生息しておる翼竜を飼いならしたものらしい。それもかなり前から……。
ただし、大飯ぐらいな上、頭が悪いモンスターのためか、結局は戦力として使いものにはならんとして、後方の連絡任務くらいにしか使っていないと言われていたらしい──。
だが、
「あー……。すまんのぉ。どうやら、研究熱心な奴らがおったようじゃの。……見るに、飛竜の編成がうまくいったことから、気をよくしたお偉いさんが、飛行部隊の創設に予算をつけたようじゃなー」
そ、それって、
「つまり──」
──ま、魔法兵団なのか?!
「そ、そうなさな……?」
「ってことはよー……テ、テメぇの仲間じゃねーか!!」
「はめやがったのか?!」と、思わずバンメルを振り返るナセル。
なぜならバンメルは魔法兵団の元帥で、勇者親衛隊を除けば唯一の航空戦力を有する兵団の指揮官だから!!
「ば、馬鹿を言うなッ。そんな面倒なことをするなら、王都で首を掻き切っておるわ───ほれ、うだうだ言う前に連中を蹴散らさんと」
……ちッ!
このボケジジイ!!
バンメルは知らぬ存ぜぬ。オマケに簡単に言いやがるが──その数……およそ百騎の翼竜部隊だ!
どこに隠れていたのか、太陽を背にして進路をふさぐ形で次々と新手を繰り出してくる。
ギェェェェエエエエエ……!
──いいだろう。
「そっちがやる気なら、騎兵連隊の前に、テメぇらから血祭りに上げてやるぁっぁああ!」
攻撃されるのは予想外。
だが、ここまできて、むざむざとやられるものかッ!!
「──全機。グライダーを切り離せ!!……損傷機を援護するため密集隊形ッ!」
『『『了解ッ!』』』
降下猟兵を満載したJu52/3mは貴重な戦力──……一機たりとも失うわけにはいかない!
ならば、行き足を損傷機にあわせて密集隊形で防御するまでと──まずは、鈍重なグライダーを切り離し、重量を軽減する。
このままでは、鈍重なグライダーを曳航したまま撃墜されかねなかった。
共に墜落するくらいなら、母機だけでも守らなければ──!!
──グライダー切り離しッ!
母機の後部とグライダー先端に火花が散り、頑丈に張り巡らせていた曳索がはじけ飛んだ!
そのとたんに、空気を切り裂く音が変わる。
……カシンッッ! ヒュィィイイイ……!
兵を満載したグライダーが切り離された事により、重荷を手放した輸送機がグググと機首を持ち上げるも、パイロットが腕力でそれを抑え込んでいた。
切り離されたグライダーは、一度空気抵抗を受けてフワリと舞うも、その後は自重と操縦によって飛行姿勢を安定させ、緩い角度で開頭して遠ざかっていく。
──敬礼ッ!
ビシィ……!
グライダー機首、上部銃座についていた兵が一斉に敬礼。ナセルも答礼しつつ、グライダー部隊を見送る
(無事でいろよ──)
……根性の別れというわけでもないが、グライダーを見捨てた気にもなる。
だが、違うと思いたい───。
──実際、グライダーが狙われるかどうかは賭けでしかない。
とはいえ、グライダーにも防御火器はあるし、……なによりも翼竜部隊はナセル達輸送機を狙うと半ば確信していた。
なぜなら、本隊である母機側10機のJu52/3Mの編隊にはナセルが跨上するドラゴンも混じっている。
……狙うなら、当然ドラゴンを有するナセル本隊のはず!!
ギィィィェェェエエエエエエエエエエエエエ!!
「やっぱり、来たか……!」
……果たして、上空に遷移した翼竜たちはナセル目掛けて殺到してきたッ!!
「おうおう、盛りおって───トカゲ風情がのー」
ニィと口角をあげるバンメルと、同じく笑うナセル。
「はは、同感だ……! かかってこい──エセドラゴンども!!」
中指をあげて挑発するナセル!
(グライダーは追わせない──……!)
──来いよッ!!
本家ドラゴン召喚士と、ドイツ軍召喚士が相手になるぞぉぉぉおお!!
二人の召喚士は嘲笑い、
その様子に、戦意を漲らせた翼竜たちと、翼竜を狩る魔術師たちが突撃ラッパを吹きならす。
ギィェェェェェエ……!!
ギィェェェエエエエエ……!!
そして──。
北の最前線の初戦は、まさか、まさかの空中戦から始まった……!!
新作投稿!
カクヨムでまず投稿したのでみてー!!
『聖女召喚されたけど、二人もいらないそうです〜実はチハたん(九七式中戦車)持ちで、燃料無限なんですが。好きに生きますね〜』
ぜひとも~!
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