「トイレに行ってくるから、まじめに勉強してよね」
須藤涼風とのデート編第二話。
午前9時20分。図書館での過酷な勉強会は始まった。今2人がいるのは図書館内の端にある勉強スペース。ここで勉強会を開催する理由は、ここ以外のスペースでは筆記用具の使用が禁止されているからだ。そのため何かを調べに図書館に来た人はこの勉強スペースで調べごとをする。消しカスなどのごみを処理するのが面倒だから一か所にまとめれば楽だという図書館側の思惑が感じ取られる。
勉強スペースには春上と須藤以外誰もいない。三連休の最終日を人々は自宅で過ごしているのだろう。三連休最終日の過ごし方を、図書館で勉強にする人は誰もいないだろう。それはまるで夏休み最終日に宿題をやることと同じなのだから。
図書館内には春上たちを除いて10人くらいの人々しかいない。
そんな中で2人きりの勉強会は始まった。
春上は鞄から教科書やノートを出す。そんな彼の顔を見て須藤はある質問をする。
「そういえば北田先生から貰ったプリントはもうやったの」
「9枚目まではやった。残るは後2枚」
「そう。それなら先にそのプリントをやらない。本当はやってないプリントを持ってるんでしょ。春上君はプリントを教科書に挟む癖があるから」
あれっと春上は思った。確かに春上にはプリントを教科書に挟むという癖がある。そして須藤涼風とは隣の席になったこともあった。その時に癖を知られたのだろうと彼は思った。しかしその癖は注意深く観察していないと分からない。隣の席だからといっても、そこまで観察するものなのか。
春上は江角の話を思い出した。
あの日の放課後、春上と江角千穂はいつものように一緒に帰っていた。そこで江角千穂は春上にある情報を伝える。
「須藤涼風さんはストーカーをやっているそうです。誰のストーカーをやっているのかはまだ分かりませんが、これが事実だとしたら第一容疑者になると思いませんか。あの奇妙なラブレターが、ストーカー行為の一環だとしたらの話ですが」
江角のこの言葉を思い出した春上は考え事をしながら筆記用具を筆箱から取り出す。一方須藤はボーとしている春上の表情を心配そうに見つめていた。
「春上君。大丈夫。ぼけっとしてたけど」
「大丈夫だ。今晩の歌番組について考えていただけだ」
無神経な春上の発言を聞き、須藤は自分の鉛筆の芯を折った。
「だから勉強に集中しろ。それだから赤点なんて取るんだから」
すると須藤は突然立ち上がった。
「トイレに行ってくるから、まじめに勉強してよね」
須藤はトイレの方向に走って行く。そんな彼女の後ろ姿を春上が見ていると、彼の携帯電話のバイプ音が鳴った。
春上は携帯電話を開く。携帯電話にはメールが届いており、彼は内容を確認する。メールの差出人は江角千穂。メールの内容を見て春上は思わず立ち上がった。
feat江角千穂になっているが、気にするな。




