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Ep.1 新しい釣り場

さーて、街に向かって走り出したはいいもののすっかり日が落ちてしまった。普通の視力ならあたりは真っ暗で何も見えない。


(でも、俺には見えちゃうんだよなぁ)

普通の人間は、この暗がりを歩くときおそらく月明かりか懐中電灯、松明の光をよりにするのだろう。だが俺のヘルメットには文明の力、ナイトスコープがついている。手元だけでなく遠くの先までよく見える。

さっき確認したとき、街の周りは堀で固められている事がわかった。多分水もはってて魚がうじゃうじゃいるはずだ!テンションが上がるが、それを理性で抑え安全運転を心がけた。


「走りやすいが石が多いな」

ナイトスコープを駆使して大きな石は極力避け、スピードを落とさないように走り続けた。いや、むしろ俺はアクセルを捻り、さらにスピードを上げた。なぜスピードをあげたかって?それは、何かが俺をつけてきているからだ。おそらく野犬か肉食獣の類だろう。ここがもしモンゴルならゴールデンレトリバーサイズの灰色狼が付けてきてるのか??

 

「やばッ!1メートルはあるな!」

スコープの端に並走している姿が見えた。さらに速度を上げた一頭が目の前を一瞬横切った。間違いない、尖った耳に突き出した特徴的な顔つき!!狼だ!!


(このまま速度を上げて突破するしかないか)

そう考えていた矢先、前方50m先に人影を捉えた。狼の群れに囲まれている。助けるぞ!そう思った時には職業病というべきか、既に体が動いていた。狼の方位網を突破したその瞬間、耳元を何かがかすめた。


(矢か?!俺今矢で撃たれたか?!)

咄嗟の判断で俺は大声を出し、助けに来た!撃つな!と叫ぶ。狼の群れに囲まれていたのは赤髪の少女。今まさに2射目の矢を撃とうとしていた。


「す、すまない。魔物か何かと勘違いした、許してくれ!」

少女は軽く頭を下げた。俺の存在に気づいてくれて良かった。あのまま無言で進んでいたらおそらく2射目は脳天を貫いていたかもしれない。にしてもこの赤髪の娘は18くらいか??どこかのモデル紙に出ていてもおかしく無い容姿をしている。

少女はバイクに興味深深、これは馬なのかと目を輝かせながら聞いてきたがそれどころではない。間合いを詰めた狼たちが一斉に飛びかかろうとしていた。


「それは後で説明する!早く乗れ!」

少女は頷き、座席に飛び乗ったと同時にアクセルを全開、前から飛び掛かってきた狼を前輪で跳ね飛ばし2度目の包囲網突破に成功した。やったぞ!突破した!後ろからは興奮気味に叫ぶ少女の声と追いかけてくる狼たちの怒り狂う声が聞こえる。


狼たちが全速力で距離を詰めてくる

「急いでリュックから閃光弾を取ってくれ!」

「閃光弾?」

「細長い鉄棒みたいなやつ!輪っかがついてるやつだ!早くしろ!」


少女は急いでリュックを漁り、閃光弾を取り出した。俺はそれを受け取るとすぐさまピンを抜いて後ろに落とす、爆発と同時に真っ暗な草原に光が満ち、爆音が轟いた。後ろから追ってくるものは何もいない。狼たちを巻いたぞ!少女は子供のようにはしゃぎ、あれは何だ!魔法か?どこで習ったんだ?と質問攻めを開始した。


俺が咳払いをすると察したのか自己紹介を始めた。

「ああ、済まない。申し遅れた、私はエリゼ・フォン・グランドだ!よろしくな!エリゼと読んでくれ、君の名は?」

「小田ユーキです」


「そうか、オーデンかよろしくな!」

この日から、俺は小田ではなく北欧神話の軍神みたいな名で呼ばれることになった。エリゼは何度もよろしくなと言いながら俺の肩を叩く。


「はいはい、よろしくよろしくと」


そうこうしているうちに、街の明かりが直ぐそこまで近づいてきた。検問には数組の入国審査待ちのパーティーが並んでいた。俺たちは最後尾に並び、順番を待った。


ぱっと見た感じ、街は周囲を木の柵で2重に囲み、外側には堀が掘られ水がはられていた。水質は良さそうで水草も青々と茂っている。時折松明の灯りに群がる虫を食べようと良型のフナやブラックバスらしき影が動きまわっているのが見える。堀を眺めてどのような仕掛けを作り、釣りをしようかと考えているうちに俺たちの番になった。


俺は検問を通ろうにも通行証や身分証を持っていなかったのでエリゼが一芝居うった。俺は地方の極貧家庭育ちで身分を示せるものがないということにした。衛兵たちは俺の迷彩服を見てみすぼらしい田舎の衣装だと思い込んだらしく、エリゼの説明に納得し無事検問を通過することができた。


にしても、なぜ俺は簡単に検問を通れたのだろう。疑問に思ったのでエリゼに聞いた。するとエリゼは語る。

「最近は国内の人口も増え、土地も食料も少なくなってきた。極貧家庭の人間は食い扶持と雨風しのげる部屋を手に入れるため兵役志願のため上京してくるのさ」

国境地帯では常に蛮族との小競合いが多発、軍は常に追加の人手を欲っしているらしく、俺も兵役に志願する一人と見られたのだろう。


さて、中世ヨーロッパにタイムスリップしたかのような街並を尻目に、エリゼに案内され宿へと向かう。今日はもう正直疲れたので、散策と情報収集は明日にするか。エリゼは歩きがらこの街の事について話してくれた。街は中央に教会と国会がある。周囲を柵と堀に囲み、縦1キロ横2キロの長方形を成し、四隅には高い塔がそびえ立ち兵が常駐、早期警戒の監視を行っているとのことだ。


「何で地理に詳しいんだって顔してるね」

俺の疑問が顔に出ていたのか、エリゼはそれについても触れる。

 

「実は元々軍にいてね、大抵の事は知ってる。ま、先週までいた部隊が戦闘で壊滅しちゃって、今はフリーの冒険者ってとこかな。この都市にきたのも新しい仕事を見つけために来たのさ。他に聞きたいことはある??」


「んじゃ、最後にこの辺で大きめの川魚が釣れる湖はあるか??」


「はえっ?!湖か、、あるっちゃあるんだけど」

宿に到着するとエリゼは部屋を2つ取った。5分後、俺の部屋に集まるとエリゼは懐から世界地図取り出し説明を始めた。



〜異世界情報〜

1.この世界には大きな連邦国家が4つ存在し、連邦どうしは睨み合ってはいるものの連邦内の国々も一枚岩ではないらしい。

2.大陸は大きなおにぎり型で、今いる連邦国家は海苔のような形をした山脈の内側に存在しているとのことだ。

3.山を越えた北東西の3方面を別の連邦国家に囲まれ南は海。


そして、ここからが重要。今いる街は西の山脈近くにあり大きな川魚が釣れる湖はそのさらに西。現在、蛮族と徴兵軍が戦闘をしている危険地帯にあるということだ。


(蛮族を撃滅すれば釣りができるか。だが、まずは明日の早朝この街の堀で何が釣れるか試してみよう)

俺はエリゼにお礼を言い、明日朝一番にギルドに向かうことを告げそのまま眠りにつくことにした。エリゼは不満そうな顔をしていたが俺はすぐに眠りに落ちた。



翌朝午前4時過ぎ、昨日作った竹製の即席釣り竿セット片手に堀へと向かった。朝マヅメの時間に間に合い、日が昇る前に水面に糸を垂らした。

近くを巡回していた衛兵が興味を持ち俺の横に座った。

「あんちゃん、何釣ってんの」

「フナかナマズあたりですかね」

「なるほどね、ハーブとスパイス使うと美味いんだよなぁ」


魚釣りについて雜談を初め、川の情報や湖の話も聞けた。釣行開始から10分ほど、25cmくらいのフナらしき魚が釣れた。

衛兵曰く、この魚もハーブなどの香草を腹に詰め塩焼きにするととても旨いらしい。衛兵は席を外すと数分後にスパイスとハーブを持ってきた、帰ったら試してみてくれ、そう言われて渡された。

どうやら普通のスパイスとハーブ、質はかなり良さそうだ。


その後、立て続けにフナを3匹釣り上げナマズも2匹釣れた。衛兵にはお礼のナマズ1匹とフナ2匹を渡し、片付けを開始。この日の約1時間の釣行は終了した。


俺は宿に戻り、外の水汲み場近くでフナ2匹とナマズの下処理を始めた。

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