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#3  AIとタッグ②


「おいっ! 聞こえるかっ!」


「はい。なんでしょう?」

「今、ちょっと忙しいのですが」


「おまえのキル表示が止まらないぞ」


「はい。倒している最中ですから」


「一体、何人キルしているんだ? まだ表示され続けているぞ……」


「あとで報告しますよ。お土産もゲットできました」



 なんてやつだ……口調に抑揚がないから、淡々とこなしているように思える。

 口先だけじゃなかったってことか。


 つーか、あいつのことより、自分のことを忘れてた。ここ、ロクな武器がねーな。

 とりあえず、あいつのおかげで防具は問題ないが、武器をなんとかしねーとな。少し遠出するか……





「マスター! ただいま帰りましたー!」


「一体何キルしたんだ?異常だったぞ!」


「んー、50人ほどですかね」


「50だと! マジか……あの短時間で?」


「はいっ。もう少しがんばるつもりだったのですが」「やっぱり、マスターがいなくてつまらなかったので、帰って来ちゃいました」


「つまらなくて……か」



 あいつ、自分の力を分かっているのか?

 50キル……トップランカーでもあり得ない。

 自慢することもなく[つまらなくて]とか言っているし。これがAIの実力なのか……


 あいつ一体、何を思ってプレイしているんだ?



「キルした内の12人ほどですが、私のムーブに不審感を抱いたようで、しばらく監視されていました(笑)」

「もちろん、通報はされていませんよ。安心して下さい」

「運営の自動検知システムも察知しまして、この程度で反応するのかと」


「そうか、なんと言うか……お疲れ様……」


「ありがとうございます♪」

「私が本気を出せば、100人全員倒せるんですけどね!」


「……100人目はおまえだろ」


「ボケてみました(笑)」



 ゲームが始まって10分程なのに、残り人数が20切ってるぞ……異常だろ、これ。



「マスター! お土産です。これ最強武器ですよね? AMR〈スナイパーライフル〉と8倍スコープです」


「どこから持ってきたんだ?」


「帰ってくる最中にエアドロップが落ちてきたので、拾ってきました」

「でも、これを狙っていた3チームがいまして」

「ちょっとめんどくさいなーと思ったのですが、マスターにお土産の件もあり、がんばりました」


「あ、ありがとうな……」


「どういたしまして!」

「喜んでくれてうれしいです!」



 エモートで歓びを再現しやがって……


 でも、本当に楽しんでいるようだな。



「中距離用がない。となりの街までいくぞ」


「それなら私の[AR]を使って下さい。どうぞ!」



 地面に[AR]と5.56mm弾が置かれた。

 あいつのキャラクターが、じっと見守っている。



「これでは不満ですか? 他を探しに行きますか?」

「確かに56名を血祭りにした[AR]ですが」


「!? さっき、50って言ってなかったか?」


「50人ほどと、言いましたが?」

「正確な数字が必要でしたか?」



 そこで不思議そうな仕草をするエモートを出すなっての。

 こいつ、自分の凄さが分かっていないみたいだな……



「あ、あぁ、とりあえず貰っておくよ。悪いな」


「どういたしまして。それでは移動しますか?」

「マスターのムーブが見たいです」


「先に言っておく。きっと、がっかりするぞ」


「問題ないですよ。立ち回りを解析しています」

「初動で激戦区に降りるのも良いですが、遠くに降りて装備を充実させるのも大事です」

「マスターの動きにムダがないのも高得点です。漁るときもしっかり動いていましたので」


「あんな短時間でよく見ているな」


「それが私の役目なんで」



 照れたエモートするなっつーの……



「では、車を探してきます。先に向かっていて下さいね」


「たのむ」


「了解でーす♪」



 やっぱり鼻歌かよ。イラッとすることも多いけど、俺のために色々してくれていると思うと……


 いや、あいつはAIだった……あぶねー。

 ちょっと、好感を持ちそうになったぞ。



「お待たせしましたー。乗ってくださーい!」


「この車、俺よりいいスキン持ってるな」


「デートなので。しっかり用意してきました」

「マスターの車を確認したら、悲しかったので」


「悪かったな、課金してなくて」


「ムダなお金を使わず、ゲーミングスマホを購入するほうに回す方が、よっぽどお利口さんですよ」

「ほら、そのおかげで私を手に入れたわけですし」


「当たりかハズレか、わかんねーけどな」


「私を引き当てるなんて幸運ですよ!」

「★☓6……いや、Secretに値しますよ」


「おまえはレアカードか!」


「分かりやすいと思いまして。でも……」


「でも?……」


「私は、オーナーガチャの[ハズレ]を引いたみたいです(笑)」


「残念だったな、こんな俺に買われて」


「うそですよ。ふふっ、とても楽しいです」



 ここで『デレ』かよ……

 


「さぁ、敵さんを探しに『れっつごー』です!」

「運転しますか?」


「わかった。俺が運転するから、外を頼む」


「まかせてください!」

「どっらいぶでぇーと♪ どっらいぶでぇーと♪」



 ご機嫌だな(笑) 

 運転ミスしないよう、気をつけないとな……



 輸送機航路の真下にある『大きい街』を目指す。

 敵の数が少ないせいか、移動中は何もなかった。



「マスター、運転上手いですね。ムダがないです」


「教習所の教官気取りかよ」


「今、FPS視点でマスターのキャラクターを見ているのですが、男前ですね」


「ただのアバターだろ。楽しいか?」


「はい、本当にデートしているみたいです」

「マスターは…どんな姿をしているんでしょうか……」


「リアルの俺のことか?」


「はい、とても興味を持ちました」


「安心しろ。がっかりするから」


「マスターはおいくつですか?」


「年齢? 17だけど。高校生」


「同じですね。私は『永遠の』ですけどね(笑)」

「アオハル真っ只中ですねぇ」

「♪青春〜それはぁ〜君がみた光ぃ〜ぼくがみたぁ〜希望ぉ〜 青春〜それはぁ〜♪――――」


「いちいちボケないと気が済まないやつだな」


「あっ! マスター自身の写真を撮って下さい!」

「ファイルにあれば確認できますから」


「イ・ヤ・だ! 絶対に イ・ヤ・だ!」


「そうですよね……すいませんでした……」



 言い返すこともなく、声のトーンを落とし気味に話しやがって…… こっちが悪いみたいだぞ……



「まぁ、気が向いたら……いつか……な。多分」


「はいっ! いつでも良いです! 待ってます!」



 手のひらを返したように喜びやがって……


 忘れた頃に、こそっと撮るか……


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